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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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デンマークで ウィーン

ミスター世界(関根 正和)

デンマーク。このコーナーには初登場の国だ。
首都コペンハーゲンは、一国の首都としてはおどろくほど小ぢんまりしている。

だがさすがはヨーロッパ、旧市街をはじめ、しっとりと落ち着いた古い街だ。

僕は、この街の夏、それも夜が好きだ。
それはチボリ・ガーデンがあるからである。

この公園は、短い夏の夜を楽しむ市民で毎晩賑わう。木立に囲まれたメリーゴーラウンドやジェットコースターには、ハデハデなアメリカの遊園地とはちがって、素朴でなつかしい情緒がある。野外シアターやパントマイム劇場、レストランなどを散策して過ごすのは、涼しくてとても気持ちがいい。

さて、そろそろ、この国の食べもののはなしにしましょうか。

この国は、Wienerbrød、ウィーンパンがうまいのです!

そう、デンマークでウィーンパン。
アメリカでいうところの、Danish Pastryだ。

ジャム、フルーツコンポート、甘いクリームチーズなどを載せた、平たいパン。

Danishというからにはデンマークが発祥の地だろう、と思うのだが、じつはそうではないわけだ。

Wikipediaによると、1850年、デンマークでパン焼き職人組合のストライキがあったために、パン屋のオーナーたちは外国からパン焼き職人を呼びよせ、かわりにパンを焼かせることにした。

なかでもオーストリアは、クロワッサン発祥の地とされているだけあって、パンの技術に長けていた。

クロワッサンの技術を使ってオーストリアの職人が焼いた、パイのようにフワッとしたパンはたちまち評判となり、外国にも広まって、「デンマークのパン」、Danish Pastryと呼ばれるようになったとさ。

アメリカでは朝食に食べるもの、と決まっているのだが、デンマークではそうではない。

デンマーク人に聞いたのだが、朝食はふつうのパンや黒パンなどを食べ、10時ごろのブレークタイムにウィーンパンを食べるのが習慣だそうだ。アメリカでも10時ごろにドーナツを食べる人がいるが、あれと同じノリである。

でも、ホテルなどでは朝食から用意してあるから、僕は朝食に食べてしまいますけどね。
これがうまいのです。

アメリカで食べるほとんどのデーニシュと比べると、別モノといっていい。

アメリカでは、パンがベチョッとしているし、上に載っている砂糖の固まりやジャムが甘すぎるし、香りもあまりない。

そこへいくとデンマークものは、クロワッサンのように、中がフワッとしていて、表面がパリッとしている。

上に載っているジャムやコンポートも、決して甘すぎない。

もともと北欧は、世界の中でもベリーの類がもっともおいしいところなのである。だから、それから作ったジャムも、当然おいしいわけだ。

ケーキ類もそうだが、ヨーロッパは日本と同じで、アメリカとはちがい、甘さ控えめ。

ウィーンパンは、デンマーク以外でもスウェーデンやノルウェーを含む北欧全体でポピュラーだ。

北欧に行く楽しみのひとつでもある。


(2009年8月16日号掲載)