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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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温故鴨知新鴨

ミスター世界(関根 正和)

アメリカでいちばんよく食べられる 鴨はなんだかご存じですか?

答えは、ペキンダック。

「えー ?? 中国ならともかく、アメリ カで?」と思われるだろうが、ちゃんと Wikipediaにそう書いてある。

じつは、Pekin Duckという種類の鴨が あるのだ。それがアメリカではいちば んよく食べられる種類だとのこと(厳 密にいうと牴罰﹇アヒル﹈〞だけど)。

その名は「北京ダック」と関連してい るのだろうが、g が抜けているところ が料理としてのPeking Duckとは違う。

料理の北京ダック(北京烤鴨)につい ては、じつは二種類ある。

北京スタイルの北京ダックと香港ス タイルの北京ダックだ。

日本語のまちがった表現として、よ く「馬から落馬した」という例がひかれ るが、これじゃまるで「馬から落馬」と 「ロバから落馬」みたいですね。

北京スタイルは、肉のついた皮を、ブ リートのように薄い皮で巻いて食べる。 いっぽう香港では、皮だけを削いで薄い パン状のものにはさんで食べる。

どちらも優劣つけがたいうまさがあ るのだが、アメリカにあるのはほとん どが香港風で、北京風は滅多に食べら れないのが残念だ。

僕が北京で食べた北京風北京ダックは(しかもPekin Duckだったかも)、全聚 という超老舗と、大薫焼鴨店という いま人気の店。

前者はトラディショナル、後者は、 ニュースタイル。最初に焼鴨といっしょ にザラメがでてきて、これをちょっとつ けながら食べる。本来ダックは甘いも のにあうのだが、ザラメとはおどろい た。

蝦 えび のテンプラに塩をちょっとつけて 食べるのと似て、本来の味がよくわか る。

そのあとは、伝統的な甜 テンメンジャン 麺醤に、 ちょっと甘めの漬物を足して食べる。と てもしゃれていた。

他の国の鴨料理では、バリ島のbebek gulingが印象に残る。田んぼにいて虫な どをついばんでいる地鴨を、皮がバリ バリになるまで焼く。夜の屋外レスト ランで、カエルの声を聞きながらバリ産 ビールをのみながら食べる。素朴なう まさだ。

イタリアで食べた、野生の鴨。

野趣のある濃い味で、人工飼育の鴨 とはまったく違う食材といってもいい。

食べている途中、ガリッと歯にあた るものがあるから、なんだ?と口から 出してみたら、散弾銃のタマだったのに は驚いた。

鴨のことを書いて、パリのラ・トゥール・ダルジャンのことを抜かすわけには いかない。

この店の名物は、鴨を、その当人とい うか当鴨の血を絞ってソースに使う。

お客に供された鴨にはすべて連番が ついているというのは、有名なので聞い たことのある方も多いだろう。

はたして味はどうか。

濃厚。馥 ふくいく 郁。緎鋭。さすが 400年 ま え か ら続く伝統料理だなあ。しかし、いいか えれば 400年 前 の 味 だ な あ 、と 思 っ た 。

つまり、冷蔵庫はもちろん、料理方法 も限られていたころの料理なのだ。

しかしこの店のすごいところは、まっ たく新しい調理方法によるモダンで創 造的な鴨料理もちゃんと提供する、と いうところにある。

軽く、洗練された味だ。

伝統をしっかり保ちながらも、進歩 は怠らない。

温故知新とはこのことだ。


LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です

Mr. Stox
太古の昔からあるコンチネンタル料理の店でスタイルはやや古いまま だが、昔に比べると味はかなり向上した。ここの鴨料理はバルサミコの リダクションソースで洗練された味。サービスはとてもプロフェッショ ナル。
味:24 予算:$80
1105 E. Katella Ave., Anaheim
☎ 714-634-2994 www.mrstox.com
Lunch: Mon-Fri 11:30am-2:30pm
Dinner: Daily 5:30pm-10:00pm
Open 7 Days

Tasty Duck
以前この場所にあった、LAで数少ない北京風北京ダックの店が、有名に なって別の場所に引越した。そのあとには、やはり北京ダックが売りの 店が新しくできた。味は勝るとも劣らずで、店の雰囲気とサービスがぐっ とよくなった。
味:25 予算:鴨一羽とって$40-$60
1039 E. Valley Blvd. Suite B102, San Gabriel
☎ 626-572-3885 
Daily 11:00am-10:00pm
Open 7 Days

(2010年10月1日号掲載)