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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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ラストスパートにディジェスティーフ

ミスター世界(関根 正和)

前号で食前酒について書いたので、 食後酒についても書かなくちゃ。  

まずその呼び名だが、 英語では after dinner drinkということもあるが、 ヨー ロッパではおしなべて digestif (またはその類型) 。  

その意味は、 とりもなおさず 「消化剤」 だ。  

食前酒のことを aperitif 「開胃剤」 とい うのだから、 食後酒のことを 「閉胃剤」 といってもよさそうなものだが、 「消化剤」 ときたもんだ。

つまり酒飲みたちが、 開胃だの消化 だのといって、 酒を飲むことに自己満足しているというわけなのだ (僕もそうで す) 。  

日本人のあいだでは、 食前酒と同じ く、 食後酒があまり普及していないし、 たのみたくても、 なにをたのんでいいか わからない、 という人が多いだろう。  

伝統的な日本の習慣では、 食事の コースを通じて酒の種類を変えていく ということはしないし、 したがって食前 酒や食後酒というものがない。  

フランスやイタリアのハレの食事では、 食前酒からはじまってワインをいろいろ飲み、 食事が終わって digestif とな る。  

この酒の特徴は、 アルコール度が高いということだ。

なぜかというと、 食事中にあまりア ルコールがまわっちゃうと食べものの 味がわからなくなっちゃうし、 途中で ダウンしたら困る。 でも、 食事が終わっ た時点では、 ラストスパートとして強い 酒を飲み、 いい気分になってフィニッシュ しようというわけである。  

おなかが 一 杯だから、 水分の多いもの をゴクゴク飲みたいとは思わない。  

そこで、 ブランデー (コニャック、 アル マニャックなど) や、 フルーツ系の甘くて 強いリキュールが人気だ。  

たとえば梨から作ったポワレ ・ ウィリ アムズ、 すぐりのクレムドカシス、 オレ ンジ風味のグランマニエールやコワント ロー。 ハーブとウィスキーのブレンド、 ドランビュイ。  

コーヒーのかわりに、 コーヒーのリ キュール、 カルーアという手もある。  

イタリアではブドウを蒸留したグ ラッパや、 アニスの香りサンブーカ、 ナッ ツのアマレット。 レモンから作ったリモ ンチェロをキンキンに冷やして飲むの もいいですね。  

ヨーロッパには、 ありとあらゆる果物 やベリー、 さらには花のエキスやハーブ 類が食後酒になっているといっても過 言ではない。  

なにを飲もうかなと考えただけでも ワクワクする。

ラストスパート酒というアイディア は中国人にもあるようで、 食事中には 日本酒とほぼ同じ強さの紹興酒を飲ん で、 最後に白酒などの強い酒をあおる のが伝統だ。  

食事のあとにバーへ行ってもう 一 杯、 というときも、 digestif が理屈のうえか らいえばいちばんあうはずだ。  

日本人はウィスキーの水割りかロッ クと決まっているようで、 僕も日本の店 にいくと自動的にウィスキーが出てく るので困ることがある。  

もちろんそれがいちばん好きだから 飲むのならそれでいいのだが、 もうすこ し digestif の楽しみを知っても悪くない のではないでしょうか。  

「日本でも食前酒を 『開胃酒』 と呼ん だらどう?」 と前号で書いたけど、 食 後酒も 『消化酒』 と呼ぶようにしたら、 もっとポピュラーになるんじゃないで しょうか。


LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です

Parkway Grill
ニューアメリカン・カリフォルニア料理の有名店。 活気のある店内が楽 しい。 料理は、 材料に手をかけ、 つけあわせにも凝っていて、 食べてまた 楽しい。 広いバーがあって食前や食後の一杯にむいている。
味:25 予算:$100
510 S. Arroyo Pkwy., Pasadena
☎ 626-795-1001 www.theparkwaygrill.com 
Lunch: Mon-Fri 11:30am-2:30pm
Dinner: Mon-Thu 5:30pm-9:30pm
Fri & Sat 5:30pm-10:30pm
Sun 5:00pm-9:30pm

Pinot Provence
ハリウッドの一軒から始まって、 いまやLA地区20軒以上、 全米に50軒 近くを擁するパティーナ系の店。 中でも珍しいプロバンス料理のこの店 は、 料理も雰囲気も申し分ない。 ここのバーは広くはないが雰囲気のい いバーで、 食前酒や食後酒がそろっている。
味:2 6 予算: $150
686 Anton Blvd., Costa Mesa
☎ 714-444-5900 www.patinagroup.com
Lunch: Mon-Fri 11:30am-2:30pm
Dinner: Sun-Thu 5:00pm-9:00pm
Fri & Sat 5:00pm-10:00pm

(2010年11月16日掲載)