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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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ボケとオタンコのオーバージーン

ミスター世界(関根 正和)

aubergine。

何のことだかご存じですか?

アメリカで通じないイギリス英語の代表格ではないだろうか。

ナスのことだ。

逆にイギリスでeggplantといっても、多くの人には通じない。

じつはaubergine というのはフランス語から来ているわけで、アジア原産のナスがフランスからドーバー海峡を越えてイギリスに渡ってきたのだろう。

アメリカのほうはどこから渡ってきたのかはわからないが、形から来たなまえなのは言うまでもない。

僕に言わせると、世界には三大ナス料理と言ってもいいものがある。

まずはイタリアのアンティパスト(antipasto =前菜)のナス。

イタリアのレストランの入り口近くには、よくアンティパスティ(複数形)の皿がテーブルに並べてある。タコやイカ、サラミなどとともに、赤ピーマンやナスをグリルしてオリーブオイルに浸したものが置いてある。

これが非常にうまいのですね。

ナスには、ほかの野菜に比べて大きな特徴がある。さてなんでしょう。

それはオイルや水分をよく吸収するということだ。

やはりアンティパストとしてよくでてくるカポナータcaponata。セロリなどの野菜とともに茹でて冷やして酢をまぜたサラダだが、これもオリーブオイルや他の野菜のうまみを吸い込むからうまいのだ。

ギリシャはムサカ(moussaka、ギリシャ語はμουσακά ς でカにアクセント)。

ソテーか揚げたナスのスライスを、羊肉とジャガイモとともにオーブンで焼いたもの。ナスのソース吸収能力がベシャメルソース(牛乳と小麦粉のホワイトソース)とよく馴染んでうまい。ギリシャを代表する食べものと言ってもいい。

そして中国の魚香茄子(ユィシャンチェズ)。

「魚香」というのは、魚ではなく、ニンニクの香りのこと。もともとは四川料理だが、中国全土でポピュラーな料理になっている。アメリカのチャイニーズでも多くの店にある。

しょうがや挽肉などとともにたっぷりのニンニクと炒めた料理で、これも炒めた他の材料のうまみとうまくからんでおいしい。白いご飯の上に載せて食べるとえらくうまい。

ほかにもある。フランスはプロヴァンスの名物料理で、ラタトゥイユという野菜の煮込みがあって、これにもナスは絶対欠かせない。

インドのカレーにも、ナスカレーはよくお目にかかる。これもカレーとの相性がいい。

日本にもおいしいナスがありますね。

ここで急に気になるのは、日本語の「ナス」だ。

「おたんこなす」「ぼけなす」とか、ナスってとかくバカとかノロマの意味につかわれる。なぜ他の野菜、たとえばキュウリやゴボウではいけないのだろう。

インターネットで語源を調べたが、諸説フンプンあって、どれもあまりピンとこない。

じつはこの野菜の特徴である吸収力が理由なのである

という自説をたてようと思って、一所懸命考えたけど、発表するのはやめときます。


LAではココ!「予算」は2人分です
Rufino's
1969年からある古いイタリアン。店も小さくオールドファッションで、メニューもよくあるアメリカン・イタリアンなのだが、この店の茄子をパルメジャンでベークした料理はとてもおいしい。ランチメニューが豊富。
予算:$40
938 S. Euclid St., Anaheim
714-491-0880 www.rufinos.net
Mon-Sat 11:00am-10:00pm
Sun 2:00pm-10:00pm
Open 7 Days

Golden China
ローランドハイツの巨大チャイナタウン、そのひとつのモールの角にある四川料理店。きどりのない小さい店だが料理はおいしくて、よくはやっている。魚香茄子もある。
予算:$20
1015 Nogales St. #129, Rowland Heights
626-964-8800
Daily 10:30am-9:30pm
Open 7 Days

(2013年1月16日掲載)



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