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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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暑い日はフィリピン料理

ミスター世界(関根 正和)

この原稿を書いている7月の下旬、LAは毎日暑い。
暑いときにはなにを食べたらいいだろう。

僕のばあい、暑い日の、とくにランチには、フィリピン料理をよく食べにいく。
フィリピンは暑い国。暑い国の食べものは、ちゃんと暑いときにおいしく食べられるようにできているのだ。
暑い日にはスイス料理だのエスキモー料理だのを食べにいきたいとは思わない(エスキモー料理店はLAにはないですけどね)。

以前、このコーナーでフィリピン料理について書いたことはあるが、
今回はそのなかでもとくにバフェ式ファーストフード。
最近だいぶ増えた。
10以上の料理がガラスケースのむこうに並んでいて、
そのなかからひとつかふたつを指さして頼むと、白いゴハンといっしょに皿にのせてくれる。
フィリピン・ファーストフードの特徴は、安い、早い、うまいである。
ファーストフードだから、早くなくちゃ困るし、安いのももちろんだ。

だが、うまさはどうだろう。
腰が抜けるほどうまいフィリピン・ファーストフードを僕はまだ食べたことはないが、
「満足」のできるうまさがある店は多い。
食べたかったようなものがちゃんと食べられた、という満足感である。

というのも、フィリピン料理には、シチューっぽいものや、水気の多い料理がいろいろある。
それと、酢やタマリンドで、すこし酸味のある味つけをしてあるものも多い。
だから、食欲がないような暑い日にも、
白いごはんの上にかけるとスルスルっとのどを通ってしまう。

チャイニーズのファーストフードのばあい、
チキンとピーナツと唐辛子(宮保鶏丁)だの、ビーフブロッコリ(芥蘭牛肉)だの、
どの店へいっても同じものばかりだなあと思ったことはありませんか?
その点、フィリピンのほうはもっとバラエティがあり、
「さー、なにを食べようかな」という楽しみがある。

豚のリブを骨付きのままブツ切りにして野菜とスープ状にしたものとか、
チキンのクリーム味のソテーとか、
タイ・カレーのようにもみえるココナッツ風味のシチューとか、
ビーフを肉汁と酢で煮込んだもの(アドボ)とか、
はっきりした味が白いゴハンによくあう
(ただし、不思議なことに、フィリピンには辛い料理はめったにない)。

じつは、ガラスケースには、こういったヌレモノ関係のほかに、
いくつかのカワキモノ関係も並んでいる。
テラピアという魚をまるごと焼いたものや、小魚のフライ、チキンのBBQといったもの。
このカワキモノとヌレモノをコンビでとる、というのも、
フィリピン・ファーストフードのたのみかたのひとつのコツである。
カワキモノがヌレモノのスルスル感をいっそうひきたてる。

問題は食器だ。
フィリピン食の食べかたは、右手にスプーン、左手にフォークということになっているのだが、
ファーストフードの店では小さくてペラペラしたプラスティックのスプーンとフォークがふつうで、
ちょっと食べにくい。

もうひとつは、だいたいどの店もまっ昼間からテレビがついていて、
ガンガン音楽がなって、若い女性がダンスを踊っていることだ。
僕は常づね、世界でいちばん美人が多いのがフィリピンだと思っているので、
気をとられて食べにくいのが困ってしまう。

(2005年9月1日号掲載)