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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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ラーメンの逆輸出

ミスター世界(関根 正和)

ラーメンはどこから来たか?
その名の由来は?
新横浜のラーメン博物館に行ってみた。
で、そこの展示説明によれば、日本では明治の末、
浅草の来々軒で始めたのが最初だという。
ラーメンという命名は、大正11年、北海道竹家食堂の王さん(山東人)が、肉絲麺を作って客にだすときに、
「よし出来た」という意味で「好了」(ハオラ)と言うのを妻タツさんが聞いて命名したと書いてある。

んー、これって本当なのかもしれないが、どうもピンとこないなあ。
中国語の「了」はたしかに「ラ」だが、ふつうは過去形にするために軽ーく言うだけだ。
その音を取り上げて料理の名前にするのは不自然だ。
日本語で「出来た」と言うからといって「たー麺」と命名するだろうか。

それに、中国に行けば、ちゃんとラーメンというものがある。
「拉麺」と書いて、拉は引っ張るという意味。
つまり手で引っ張りながら麺を細く作っていく、いわゆる手延べ麺のことである。
これがむかし日本に伝わって、日本独自の発達をして、ラーメンになったのだ、と僕は信じている。

さて、今回はその日本独自、というところがポイントだ。
中国には言うまでもなくさまざまな種類の麺や、それを使ったスープ麺がある。
しかし、日本のラーメンは、それらのどれともまったくちがう。
まず麺が、鹹水を使って作るので黄色くコシがあり、
独特の風味と、チリチリしたところがスープとうまくからみあってうまい。
スープも、オリジナルの醤油味に加え、日本全国ご当地ラーメンがあって、
そのバラエティーもすばらしい。

近年、中国人や台湾人が多く日本を観光で訪ねるようになった。
最近日本の中級ホテルの朝食バフェに行くと、
宿泊客の半分以上が中国系ではないかと思う。
ということは、かれらは日本に無数にあるラーメン屋にも入ってみて、
この日本独自のラーメンのうまさに気づいてしまったのであろう。

そこでかれらは、自国に戻ってさっそくラーメン屋を開いたり、
自分の食堂にラーメンを加えたりしているのである。
このあいだ訪れた北京でも、飛行場のターミナルをはじめ、
街中にたくさんラーメンの店があった。
入り口に貼り出されたメニューの写真などをみると、
伝統的な手延麺という意味の拉麺ではなく、まごうかたなき日本のラーメンである。

中国を含む東南アジアの若い人たちにとって、
日本の文化、音楽、ファッション、テクノロジーなどはあこがれの的である。
街なかのコンビニに行けば、化粧品のラベルやお菓子の袋に日本語が氾濫している。
その日本語も日本人が読めばチンプンカンプンのものばかり。
つまり日本製にみせかけることによってイメージアップをはかっているのである。
「〜の」という意味の中国語は、「的」という字なのだが、
そこに日本語の「の」を使うのも一種の流行なのである。
たとえば「鮮の毎日C」というビタミン・ドリンクの広告は中国中でみることができる。

ラーメンにはなしを戻そう。
中国のラーメンはうまいかまずいか。
さすがに中国人、麺好きの国民性というか、麺の扱いをよくわかっている。
すごくうまい。
特に日本のオリジナル・ラーメン、つまり昆布やかつおのだしを使った澄んだ醤油ラーメンで鳴門やシナチクをのせたもの、こういう原点に返れ的ラーメンみたいなものもすごくうまい。
もちろん、サッポロ・ラーメンやハカタ・ラーメンもしっかりうまい。
商売上手な日本人ラーメン屋さんも、しっかり中国人街に進出して人気を博している。

(2006年11月16日号掲載)