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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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チーファ料理のしあわせ

ミスター世界(関根 正和)

僕がロサンゼルスに住んでいて、どういうことにしあわせを感じると思いますか?

そう、このコーナーをいつも読んでくださっている方ならご存じのとおり、毎日ちがう世界中の食文化を、しかも正真正銘オーセンティックな料理を味わえることである。
しかも、チャイニーズひとつを例にとってみても、広東、上海、江南、台湾、四川、湖南、潮州、山東、山西、北京、福建、雲南、澳門(マカオ)などなど、店ごとに各地方の料理の特色がはっきりとでている。

地方の区分けだけではすまない。
イスラム教徒のためのチャイニーズがあるかと思えば、
ユダヤ教徒用のチャイニーズもある。
さらには、ほかの国の文化との融合がある。
日本人向けの中華はご存じのとおり。
コリアタウンに行けば韓国人向けの店(山東料理のひとつのバージョン)が無数にある。
ベトナム式やタイ式はもちろんのこと、以前このコーナーでとりあげたように、
フィリピン式やインド式チャイニーズまである。
ここまでくると面白くて面白くて、僕はしあわせを通り越して、興奮してくるのである。
さて今回は、その興奮の極地たる、ペルー風チャイニーズの出番だ。
ペルーと中国? 
こりゃまたずいぶん離れた場所で、面白いなあ、と思っていただける方は、僕と同好の士である。

そもそも中国人は、世界中で移民として住んでいるが、ペルーには特に多い。
19世紀にマカオや広東あたりから、
10万人以上がサトウキビ農園などで労働するために移住したらしい。
いわゆる「苦力(クーリー)」である。
そこに定着して何世代かたった彼らに、
第二次大戦後の共産革命を嫌って中国を逃げ出した人々が大量に加わったペルーでは、
他の中南米の国では見られないほど、チャイニーズ料理が浸透した。
いまやリマに行けば、街中のありとあらゆるところにチャイニーズレストランがある。
もちろんチャイナタウン(barrio chino)もある。
他の国とはちがう、ペルーと中国の食文化が独自のフュージョンを見せていて、
それにはchifaというちゃんとした呼び名さえある。

chifaとは、中国語の「吃飯」、つまり「食事」という意味の「チーファン」が訛ったものだ。
代表的なものはWantan。ワンタンスープもあるし、揚げワンタンもある。
では、Chaufaというのは何だと思いますか? そう、炒飯の訛ったもの。
ペルーにはインカ帝国の歴史や、アンデス独自のさまざまな食材、
それにスペインの影響は言うまでもなく、ポルトガルやイタリアの移民からも影響をうけ、
chifaは食べてみれば複雑な食文化のミックスが感じられる。

緑色の、まるで法連草パスタのようなchawmein(炒麺)や、tallarinというヤキソバの一種もある。
日本人にとっては、スープヌードルがいろいろあるところもまた格別にうれしい。
中国の湯麺、日本のラーメンやうどん・そば、
韓国のカルグクスや冷麺とははっきりと異なるタイプのスープヌードルで、
ラーメン類の食べ歩きをするのが好きな人なら、
チーファのsustanciaやsopa(スープという意味だが、
ペルーの場合は麺が入っていることが多い)を食べずに食べ歩きは完成しないだろう。

能書きはともかく、そんな食い物、いったい旨いのか!? と聞かれそうだが、答えは「旨いです!」。
だまされたと思って、食べてみてください。
旨さプラス食文化の面白さに、感激していただけるでしょう。

(2007年3月16日号掲載)