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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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愛すべきかな、韓国メニュー

ミスター世界(関根 正和)

このあいだ韓国に行ったとき、以前に比べて感じたのは、
レストランの入り口の看板やメニューに、日本語がふえたことだ。
日本人観光客が急増したこともあるだろうが、
日本人の来そうにない地域や店でも、ちゃんと日本語が書いてある。
これは、日本で英語を使うのとおなじ、
ある種のカッコよさを追求したものだと思う。

しかし、これが、必ず笑える日本語なのである。
笑えるという意味では、日本で看板やメニューに使われてる英語だって決してひけをとらないし、
ヨーロッパでもおかしな英語はいくらでも見られる。

今回はいままでに集めたおもしろい韓国式日本語メニューを、いくつかご紹介しよう。
すべて僕自身が目にして、厳密に原文どおり書き留めてきたものである。
「みそチデ定食」
「つゐにんじん焼き」
「どじょうの者迂み鍋」
食材はなんとなくわかるのだが、
料理としてはちょっと不気味である(苦労して解読した結果を、いちばん下に書いた)。
「お飯る物」
これを解明するのには一年かかった。
「スソドフ」の種類に、「カイセニ」と「ゴシブチョソ」がある。
「スソドフ」がスンドゥブとわかる技術を身につけた僕としては、カイセニは海鮮だとわかった。

だが「ゴシブチョソ」には参った。
食べてみたら牛腸入りだったが、なぜ「ゴシブチョソ」かはいまだにわからない。
「カソユク定食」(韓国定食)
「まじぇゴハン」
「タニ焼き」(タコ焼き)
「カルビまりそば」
あたりはカワイイといえる。
しかし「まりそば」が「もりソバ」だとわかっても、何故カルビがつくのかは不明。
すこし複雑な料理だと、
「海藻とねぎの敗り合わせ韓式本場おこみ焼き」
「炒め野菜とはるざめのつけ合わせもの」
「海産物鍋と少麥ご飯セシト」
なんていうのがあるが、これらはよく読めばわかる。

ところが、
「甘味の冷やし野菜入りデうッスそめん」
これはどんな料理かまったく想像できない。
「いなり腐し」
「豆腐ケヂ」
「野(のびる)ともに洞窟(どうくつ)煎」
となると、ちょっと恐怖感をおぼえる。
「野」と書いて「のびる」と読ませるところもすごいが、
洞窟に住む蛭(ひる)の一種でも煎じてでてくるのだろうか。

というわけで、ツとシ、ンとソの自由な互換性、ツとッ、ウとゥなどのまったくの同一視。
濁点があろうがなかろうが完璧に無視。形が似た字があれば、
入れ替えることはなんら差し支えない…。
どこの店に行っても、みごとにこれらの共通点が見られる。
もしかしたら、メニューを日本語に翻訳するのは、
韓国内のどこかにひとりのおじさんがいて、
すべて一手に引き受けているのではないだろうか?

Photo by Masakazu Sekine

(2007年4月16日号掲載)