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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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歴史遺産のポーランド料理

ミスター世界(関根 正和)

ポーランド、ワルシャワの旧市街。ユネスコの世界歴史遺産だ。
歴史といっても、たかだか半世紀である。
それがなぜ世界遺産になったかというと、
第二次大戦中ナチによって徹底的に破壊されたこの街を、
戦後になって市民たちが自分たちの手で、
それ以前のとおりに復元した。
それが歴史的重みを持つのである。

まえからいってみたかったその旧市街に、この夏訪れた。
思ったよりずっと広い地域の、すべての建物が装飾や内装にいたるまで緻密に再建してある。
ポーランド人の、自国の文化や歴史に対する強い誇りを感じ、感動的であった。
ここへ来た大きな目的のひとつは、もちろん本場のポーランド料理を食することだ。
ポーランドは初めてではないが、前回はワルシャワではなかった。
しかも20年近くまえの共産主義。モノ不足の真最中で、うまいものはなにもなかった。

だが今回はちがう。いまやEUにもNATOにも加盟したこの国の、近年の経済成長は著しい。
観光客もどんどん来ている。
ポーランド料理とは、ひとことでいえば、ロシア料理とドイツの料理の中間といっていい。
そう、ここはビールやソーセージが、ドイツに負けないくらいうまい。
ザワークラウトも常食だ。
焼きソーセージの盛り合わせ、などというものがあって、
レストランでよく食べているのを見かけた。

そしてボルシチやストロガノフなどのロシア料理。
ボルシチは、ロシアと同じく温かいのと冷たいのがあり、
夏だったので冷たいのを頼んでみたら、ビーツのほんのり甘いまろやかなスープが適度に冷えて、
清涼感にあふれ、みごとなうまさであった。
もちろん、ポーランド独自の食べものもある。
まずはピエロギ(Pierogi)。押しも押されぬ、ポーランドを代表する料理だ。
小麦粉の皮に、ひき肉、キノコ、たまねぎ、キャベツ(ザワークラウト)、
またはチーズ、ジャガイモなどを包んで茹でたもの。まさに水餃子だ。
それらのいくつかの具のピエロギの盛り合わせを食べた。
食感はイタリアのニョッキに似ている。餃子のようにジューシーではない。
そういう点で、肉よりも、ザワークラウトやチーズのものがうまい。
それに、僕は食べそこなってしまったが、ブルーベリーのピエロギというものがあり、
サワークリームをかけて食べるスナックだ。
これはうまそう!

もうひとつ代表的な料理が、ズレック(Zurek)という、白ソーセージ入りのライ麦スープだ。
ちょっと雑炊に似た感じの食べもので、親しみやすく、心と体が温まる。
今回いちばんうまかったのは、白ソーセージに、
ホースラディッシュから作ったソースをかけたものだった。
これを旧市街の、300年くらい経っていそうなレストランで(じつは60年しか経っていないが)味わいながら、ポーランドの苦難の歴史といまの繁栄に思いをはせたのであった。

(2007年8月1日号掲載)


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