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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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中華料理の虫の数々

ミスター世界(関根 正和)

チャイニーズ・レストランのメニューで『』という字をみつけたら、あなたはその料理を注文しますか?
虫の下とはなんだろう?
『蜆』だったらどうでしょう。虫を見る?
じつは、『(シアー)』というのは『蝦』の簡体字で、
『蜆(シアン)』はアサリのことである(辞書にはシジミと出ているが実際はもっと大きい)。

そういえばこの『蝦』や『蜆』、あるいは『蛤(ゲー)』(はまぐり)など、
どれも虫ヘンになっているということは、どうやら中国では、
貝やエビなどの甲殻類は、虫の一種だと思われているらしい。
とはいうものの、あわび『鮑魚(パオユー)』はどういうわけか魚である。
といえば、『蛄』と書いて『シャーコ』と読み、スシなどででてくる『しゃこ』のこと。
そうです、あれって中国語だったんです。
ちなみに大きなエビ、伊勢エビなどを『海老』と書くのは日本だけのことで、中国語ではない。
中国語では『龍蝦(ロンシアー)』または『明蝦(ミンシアー)』である。
もっとも、スシやサシミなどの日本食がブームになってる近ごろの中国では、
日本風に『海老』と書くことがかっこいいという風潮も一部にはあるが。
『蟹(シエ)』(カニ)も虫の一種とされているようだ。
これは『蠏(ハオ)』とも書き、これの簡体字はなぜかないので、
筆記体では『蚧』が使われている。
どうして『解』が『介』になるのかはわかりませんが。

そういえば、中国語ではカキのことは『蠔』だが、
簡体字になるとこれも突然どういうわけか『蚝』になってしまう。
まるで毛虫である。
そして、ミル貝『象抜蚌(シャンバーバン)』も、くらげ『海蜇(ハイツェー)』も、
そしてヘビ『蛇(シェー)』やカエル『蛙(ワー)』でさえも、
中国では虫の仲間とされているらしい。

ただし、蛙はメニューではふつう『田鶏(ディアンチー)』、つまり、田んぼにいるチキンと書く。
たしかに味はチキンに似ている。
中国や台湾に行くと、商店の看板の『鞋(シェ)』という字があちこちで目に入り、
われわれ日本人にはどうしてもカエルを売っている店に見えてしまうのだが、
これは中国語で靴屋さんのこと。
『靴(シュエ)』という字はブーツのことである。
あ、それから、クラゲのことを『海蜇』と書いたけど、『蜇』とは何のことだと思いますか? 
哲学の『哲』とは違いますねえ。
『蜇』とは「(毒虫などが)刺す」という意味だ。つまり『海蜇』とは、
「海にいる、刺すヤツ」というわけで、なるほど、となる。
タコのことは『蛸』と書くから、これもやっぱり虫の一種か…と思うのだが、
これはなぜか逆に日本語でのことで、中国語にはこの字がない。
タコは『章魚(チャンユュイ)』だ。

そしてもうひとつとても重要な食べものに、『蛋』がある。
ん? ノミ? と思うだろうが、ノミは『蚤(ザオ)』で、これは『蛋(タン)』、
つまり蛋白質の蛋、すなわち卵のことである。
『卵(ルアン)』も中国語なのだが、メニューではかならず『蛋』を使う。
そういえばピータン『皮蛋』といいますね。
というわけで、チャイニーズメニューでは無視できないのが虫たちである。
それはそうと、にじ『虹(ホン)』はどうして虫のなかまなのでしょうねえ?

(2007年10月1日号掲載)