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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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カレーの新発見

ミスター世界(関根 正和)

光の三原色、ご存じですね。
赤・青・緑。
これを全部あわせると白になる。
しかし、絵の具の三原色、赤・青・黄を混ぜると黒になる、
すべての絵の具を混ぜるとグレーになる。
と、むかし理科の時間に教わって、
ふしぎだなー、思ったものだ。
加法混色と減法混色とのちがいなのだが…。

ところが、僕はある日、もうひとつの混色がある、というたいへんな事実に気がついてしまった。
これはもしかしたら世界のどの学者もまだ気づいていない、新発見ではないだろうか。
食べものを全部混ぜると何色になる?
答えは白でも黒でもグレーでもない、茶色なのです!!

それに気がついたのは、インド料理を食べていたときのことだ。
カレーにはさまざまな種類があるが、おしなべて茶系統である。これはいったいなぜなのだろう?
それは、いろいろな色をした食材やスパイスをたくさん混ぜると、
茶色くなってしまうからにちがいない。
その証拠に、雑食動物の最たるもののヒトが、さまざまな物を食べ、
それが胃や腸でミックスされると、茶色になって出てくるではないか。
これが白かったりグレーだったりしたら気持ちが悪い。
美味礼賛という題名だというのに、前号のコエ溜めオレンジジュースに続いて、
なんともはや申し訳ないテーマだが、この新説は学会に発表するまえに親愛なる
ライトハウスの読者にまず発表しなければと思った次第である。

でもこれだけでは申し訳ないので、インドのカレーについてもう少し。
日本人はカレーを食べるときはカレーだけ食べる。
つまり他の料理をいっしょに食べることはまずない。
しかし、インド人はちがう。
数人で食べるときはもちろん何種類かのカレーを注文するし、
ひとりで食べるときは、通常タリーとよばれる定食を注文する。
タリーは、お盆に仕切りがあって、何種類かのカレーが盛られてくる。
庶民的な食堂では、テーブルに置かれた皿代わりのバナナの葉の上に、
ウェイターがシャモジでライスをドバッとのせ、いくつかのバケツの中から
2〜3種類のカレーをすくってライスのまわりにベチョッ、ベチョッとのせてくれる。
これを客は手指をたくみに使って、ライスをカレーAと混ぜては食べ、
カレーBと混ぜては食べ、となるわけだ。

日本では誰がカレーは一食につき一種類と決めたのかはしらないが、
こうやってバラエティーがあったほうがぜったいにおいしい。
こんどご家庭でカレーライスをするときは、ぜひ肉カレーと野菜カレーといろいろ食材をあわせて、
ちがうルーを使って、いくつかのカレーを作って同時に食べてみてください。

きっと結果は茶色です。

(2008年5月15日号掲載)