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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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朝食のすすめ その

ミスター世界(関根 正和)

 3号まえに世界の朝ゴハンについて書いたけど、じつはもっと書きたいことがあるのです。
 よくいわれることだけど、日本人の旅行パターンは、滞在日数が短く、そのあいだにできるだけたくさんのものを見てやろうとする。

 たとえばハワイのリゾートに泊まってると、朝っぱらから玄関に大型バスが止まっている。見ていると日本人の一団がゾロゾロと乗り込んで、どっかへ行ってしまう。
 観光かショッピングか知らないが、せっかくハワイに来たのなら、もっとのんびりと海やプールサイドを楽しんだら?
 朝食をとるのも、彼らは朝食バフェに決まった時間にドッとやって来て、さっさと食べていなくなる。
 僕にいわせれば、旅の朝食というのは、今日一日の観光のために腹を満たすだけではなく、朝食そのものを楽しみのひとつとしてもいいと思う。

 たとえば、ルレーシャトー。
 これも以前に書いたけど、ヨーロッパを中心に、中世の城や貴族の館などを改造した小規模ホテルを展開している、フランス系のフランチャイズだ。
 その多くは景色のいいところや森の中などにある。
 まさに貴族になった気分の部屋でゆっくりと目を覚まし、これもまた貴族風朝食ルームに行くと、ルレーシャトーの場合は必ずそうなのだが、そこのキッチンで焼いたばかりのさまざまなパンがサーブされる。
 これがこたえられない。フランスのパンはどこにいってもすばらしいのだが、特にルレーシャトーの朝食で食べるパンは、これを目的としてフランスまで出かけて行ってもいい。
 これまた世界一おいしいフランスのバターと土地の果物で作った自家製ジャムをつけ、ゆっくりとカフェを飲む。
 窓の外にはみどりの庭と、その先にはロワールの森。
 数人しかいないお客は、まわりをみださないように、小さい小さい声で会話しながら、みんな朝の静かなひとときを楽しむ。
 今日の午前はテラスで読書をし、午後からこのあたりの森を散歩して、夜はこのホテルでまたすばらしいディナーとワイン、そしてまたここにゆっくり泊まる。そんな気持ちの余裕が、朝のパンとコーヒーを格別においしいものにしてくれるのだ。

 ルレーシャトーまで行かなくても、パリでもいい。
 大きなホテルに泊まったら、そこで高いお金を払って朝食バフェを食べないで、ちょっと外に出たらいい。
 朝食前の散歩は特に気持ちがいい。
 夏のパリ、朝は涼しくて、柔らかい太陽のもと、木漏れ日の下にテーブルを出しているカフェをみつけ、そこで朝食をとる。
 フランスのオムレツ、これは日本のオムレツともアメリカのオムレツともちがう、格別なものなのだ。
 卵もバターも焼き方がちがう。
 これとバゲット、コーヒー。
 値段はホテルのバフェの半分以下。パリのよさは倍以上。
 フランス人はここで新聞をよみながら一時間もかける。
 みなさんはガイドブックでもいいです。いちどパリの朝食に一時間かけてみてください。


(2008年9月16日号掲載)