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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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イタリアン・レストラン食習慣

ミスター世界(関根 正和)

以前書いた、「韓国レストランの食習慣」がご好評をいただいたので、調子にのって今回はイタリアン・レストランでの習慣について。
韓国の次なら中国じゃないの、と思われるかもしれないが、日本の多くのひとが知ってるつもりで知らない習慣ランキングNO.2がイタリアなのである。
 
まずは、パンの食べかた。
レストランに入ると、テーブルにすぐ「pane」つまりパンがバスケットに入って出てくる。これは別におどろかない。

しかし、近ごろのアメリカや日本のイタリアン・レストランでは、オリーブオイルとバルサミコをテーブルにおいて、これをつけてパンを食べろ、というところが多いので、イタリアでもそうすると思っているでしょう? これがちがうのですね。

僕はイタリアは数十回旅をして、北はアルプスから南はアフリカ沿岸まで行ったが、
レストランでパンにオリーブオイルをつけているひとは1度もみたことがない。
そもそも、テーブルにオリーブオイルやバルサミコは、サラダをたのんだときに出てくるだけである。

ではパンはどうやって食べるかといえば、かれらはなにもつけないか、もしくはバターだ。
バターがテーブルに出ていないこともよくあるので、ウェイターにリクエストする。
イタリア語でバターのことは「ブーロ」である。

余談だが、イタリア語はスペイン語とよく似ていて、共通の単語が多い。
そこで、スペインや中南米を旅行中のイタリア人が、レストランでバターがほしいと、
ウェイターに「ブーロちょうだい!」ということがよくあるらしい。
スペイン語のバターは例外的にイタリア語とはまったくちがって、
「マンテキーリャ」と言う。「ブーロ」とはロバのことだ。
つまりイタリア人はレストランで「ロバ持って来い!」と叫んでいるわけである。

そして、イタリアのレストランにはカバーチャージというものがある。
別にエンターテインメントがあるわけではなくても、テーブルに座ってパンが出てきたところで、
ひとり数ユーロのカバーチャージ(copperto)が発生するのだ。
請求書をみて、「頼んでないものがついてる!」と文句をいわないこと。

さて、次に料理の注文だが、ふつうは前菜をとって、パスタ、そしてメインコースとなる。
前菜はともかく、パスタを省略するということはまずありえない。
ましてや、パスタだけでメインを食べずに終わり、
というアメリカ人や日本人がよくすることは、決してないといっていい。

イタリアはどこに行っても観光客になれているので、
そういう注文をしてもヘンな顔をされることはないが、
イタリア人はしないということを知っていても損はしないだろう。
さてパスタ、とくにスパゲッティーなどの麺をたのむと、アメリカ人や日本人は、
スプーンを左手に持ち、右手のフォークをスプーンにおしつけてパスタを巻く。
イタリア人は決してそういうことはせず、右手でフォークにさっと巻きつけて食べる。
そんなこといったって、スプーンを使ったほうが食べやすいんですから、
という方はそれでかまわないのだが、これもイタリア人はしない、
ということを知っていても損はしないだろう。

食後にカプチーノは飲まない、というのは以前にも書いた。
チェックは、こちらからリクエストしないかぎり、アメリカや日本のように持ってこない。
「Il conto, per favore(イルコント・ペルファボーレ)」。
「チェック、プリーズ」がイタリア旅行でもっとも重要なイタリア語の
フレーズのひとつとなるゆえんである。
店へ入ったときの「Buona Sera(ボナセーラ)(今晩は)」や、
出るときの「Grazie(グラッツィエ)(ありがとう)」、「Arrivederci(アリベデールチ)(さよなら)」は、
ぜひおぼえて、大きな声で言いましょう。

(2006年2月16日号掲載)


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