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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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健康的料理

ミスター世界(関根 正和)

ちまたでは、「どの国の料理がおいしいか?」という議論はよくおこるのだが、「どの国の料理が健康的か」というはなしはそれほどおこらない。

だって、何料理といったって、どんなものを注文するのか、つまり肉なのか魚なのか、焼くのか油で揚げるのか、といったことによってちがいますからね。

ところが、どんなものを注文しようと関係なく、健康的! という料理があるのです。
それが韓国料理。

健康のためには、食材が偏らないように、7つだかの食品群から、できるだけ多くの種類の食材を食べるのがよろしい、とよくいわれるでしょう?

「多くの食材を手軽に食べられる料理、イコール健康的な料理」と定義すれば、これほど健康的な料理はない。

何を注文しようがおかまいなしにドドッとテーブルに並べられる、あのたくさんの小皿たち。
何十年も前初めて韓国に行った時、最初に入った食堂で、小皿たちがたちまちテーブルに並んだ時の驚きを今も思い出す。
 
韓国語で「パンチャン」と呼ばれるこの小皿たちは、小魚、ワカメ、卵焼き、ポテトサラダ、モヤシ、ほうれん草、それに大根、きゅうり、白菜のキムチ。
 
このへんは定番だが、店によっては趣向をこらし、もっといろいろ出てくるところもある。
お好み焼き、コンニャク、はるさめ、焼き魚、豆、豆腐、さらにはナマの蟹や牡蠣。
日本では、カツドンを頼めば、サイドにせいぜいタクアンか白菜の漬物に味噌汁一杯。
カレーライスなら福神漬け。
サイドディッシュとして注文するようなものもあまりない。せいぜいサラダかな。

中国料理も大勢で行ってたくさん料理を注文すれば、いろいろな食材を食べることができるが、ひとりではなかなかそうもいかない。

そもそも韓国料理というものは、焼肉にしてもスープ料理にしても、料理そのものは店による味のちがいは非常に少ない。
そこで店としては、パンチャンで差別化をはかるのである。
日本にある韓国焼肉屋などで、パンチャンをひとつひとつ別料金を取ったりするのには腹が立つが、

アメリカのコリアンレストランでも、もちろん韓国でも、タダである(何かの料理を頼めば)。
そしておかわり自由。これが韓国料理の特徴であり、醍醐味である。
でも、食べきれない。
食べきれないから、残す。
残ったものは、次の客に出す。
ソウルでは最近、パンチャンの使いまわしをやめよう! というキャンペーンがはじまったそうだ。
ということは、今まではおおっぴらに行われていた、ということらしい。
これではあまり健康的とはいえないかもしれないですねえ。

* * *
ちなみに、パンチャンのおかわりをしたい時には、そのお皿を指差して「トーチュセヨ」といえば、「ネー(はい)」といってすぐもってきてくれる。だがきれいに食べてしまったお皿を指差しても、なにが入っていたかウェイトレスにもわからないから、すこし残っている段階でたのむのが韓国料理パンチャンの奥義。


(2009年3月16日号掲載)