食べる
Food

ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
ミスター世界

フニャフニャマックチーズ

ミスター世界(関根 正和)

「MacCheese」という食べものを御存じですか?
なにそれ、マクドナルドの新メニュー?
 …そうではない。

「Macaroni and Cheese」の略称で、アメリカにはそうやって
略す人が多い(Mac & Cheeseともいう)。
 
このあいだ、ふと考えたのだが、日本の家庭で子供にいちばん人気が高い夕食は、たぶんカレーライスだろうなあ、でも、アメリカでは何だろう?
そして思い当たったのが、マカロニチーズだった。途端に、ムショウに食べたくなった。

僕は日本生まれの日本育ちだけど、なぜか子供のころによくこれを食べた記憶があるのだ。
マカロニを茹でて溶かしたチーズを和えただけのもの。あの、フニャフニャした歯ごたえ。空洞パスタだからこそ生まれる頼りなさ。あれがこたえられない。
 
そして一番ありふれたあのオレンジ色の、チェダーチーズ。これじゃなきゃダメ。

他には、ハムだの野菜だの、余計なものは決してミックスしちゃいけない。全編これフニャフニャマカロニの食感で統一してくれなくちゃイヤだ。

食べたい! と思って、近所のレストランのサイトを軒並み調べてみたが、メニューにのっていない。

やはりこれはレストランメニューではなく、家で食べるべきもののようだ(学校給食でも定番らしいが)。

そこでグローサリーに車を走らせた。

あるある、冷凍ものに乾燥もの、レトルト。いろんな種類がいろんなメーカーから出ている。

アメリカでいかにポピュラーなものかがよくわかる。

冷凍ものが一番簡単そうなので、これを買ってきて早速家でチンして食べてみる。

なーるほどね。決してうなるようなうまさのものではないが、ほっとする。心の奥のほうにしっくりと落ちつく。

もしイタリア製のパスタとイギリス製の高級チェダーチーズを使って作ったとすれば、もっとうまいだろうか? 多分そうではない。

日本の喫茶店なんかで出てくる、ナポリタン・スパゲッティもそうだが、あれはイタリア製のパスタをアルデンテにしてイタリアのトマトソースで作ったらダメ。あの日本製ケチャップとソースの味がいいのだ。
 
さて、そのマカロニだが、じつはイタリアにはmacaroniというものはない。

昔、パスタのことをmaccherone、複数形でmaccheroniと呼んでいて、これがイギリスに渡ってスペルが単純化されたものがmacaroni。

いまは穴あきパスタのことに限定した呼び名だが、イタリアのレストランでmaccheroniと書いた料理はまずお目にかからない。穴あきパスタとしてはrigatoniやpenneである。
チェダーチーズを使ったパスタというのもイタリアではお目にかかったことはないから、「MacCheese」はチェダーチーズの本場、イギリスで創作され、アメリカに渡ったものらしい。 マクドナルドのメニューに加えてほしいです。


(2009年4月16日号掲載)