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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

133)「不」こそがビジネスの種

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
「不」を発見しましょう!


とにかく安い

リーマンショック以降、景気は減速していますが、現場感覚でいうと、価格がとにかく安くて利益が出ない、いわゆるデフレです。日本では2009年11月20日に菅直人副総理がデフレ宣言をしています。
 
990円ジーンズ、牛丼チェーンの値下げ競争、ミネラルウォーターより安い100円ビールなどの値札を店頭で見ていると、肌感覚で「これらの安値がさらに景気減速へアクセルを踏んでる」感じを受けます。値下げは立派なマーケティング戦略のひとつですが、ありていに言ってしまえば現金残高の競争であり、各社そんなに値下げしてしまって、本当に大丈夫なの? と思ってしまいます。市場で最安値を出せるのは一社だけであり、その一社が利益を残せるとすれば、潤沢なキャッシュを持っているか、H&MやIKEAのように徹底したローコスト物流戦略やIT投資の裏付けがない限り、「ただの利益吐き出し」になってしまいます。H&Mはグローバル調達力と国際ハブ物流によるコストマネジメントで、安売りでありながら粗利益率59%(08年度)、営業利益率22%(同)と、根拠ある安値なのです。


第三のトレンド

 
そんな中、私が「第三のトレンド」と呼んでいる新しい価値創造で利益を着実にあげる企業が勃興してきています。たとえば「りそな銀行」。ひと頃、青息吐息で破綻寸前だったりそなを見事復活させたのは、元JR東日本副社長の細谷英二会長。金融不況の中、1200億円の黒字を叩き出しています。秘訣は、「銀行の常識は世間の非常識」をモットーにした、徹底的なお客様目線による改革です。
 
日本の銀行は「3時に閉店」が常識。細谷さんが行員に理由を聞くと、「さあ、昔からそうですから」。要するに、3時に店舗のシャッターを下ろした後、行内の現金合わせをするのに早くて2時間かかる。1円でも合わなければ帰れない。だから3時に閉店していたらしいのです。

しかし、それはあくまで銀行側の都合であり、お客様への価値は1ミリも増えていません。お金合わせの仕事は、独自のITを導入することでヒューマンパワー不要となり、5分以内で済むようになりました。そこで、お客様の便宜を増やすために閉店時間を5時へとずらすことができたのです。

また、企業にばかり顔が向きがちな都市銀行の慣習を破り、地元密着の姿勢へとギアチェンジ。信用金庫並みに、地場中小企業や個人顧客へのキメ細かいフォローをするようになりました。一方、都市銀行の強みも活かし、地方の商店が東京進出する際の物件の手配などで、りそなならではのネットワークを駆使してお手伝いします。
 
細谷氏が銀行の常識を顧客目線で見た時感じた不満・不安・不便の三つの「不」が発想のポイントになっています。

都内に29店舗を展開するすしチェーンの「すしざんまい」。外食不況の中、年商125億円。築地本店は年間70万人が訪れ年商17億。人気の秘密は、24時間365日営業、メニューのある明朗会計、いつ行ってもバラエティ豊かでおいしいネタが食べられる、など多数あります。いずれも従来のすし屋の常識を裏返したもの。価格は、回転ずしより高いが、一般のすし店より安い。たとえば、クロマグロの大トロ、通常なら「時価」でしょうが、418円と明朗会計です。24時間年中無休を支える独自の魚仕入れノウハウと320人を擁する職人の養成(すし職人学校まで自前で開校しています)。

同社の木村清社長もまた、すし屋の常識に感じる「3つの不」に挑戦することによって、オリジナルな店を開発することができたのです。

和歌山県の梅農家てらがき農園。ここも業界常識を破って完全無農薬の梅栽培に挑戦し、09年秋、ようやく念願の無農薬の梅エキスが完成しました。通常の梅でエキスを作ると農薬が50倍以上に濃縮されてしまいますが、無農薬なので安心です。私も愛用していますが、胃薬代わりになるし、歯痛にまで効くのでびっくりです。


「不」を発見する

どんな業界にも常識があります。その常識こそが、ビジネスチャンスを生む土壌といえます。顧客目線で、それら常識のひとつひとつを洗い直してみてはいかがでしょう。
 
「不満」「不安」「不便」の三つの「不」こそが、明日のビジネスの種です!