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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

137) K-1ビジネス

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
あなたのライバルは?


「業界」が消える

数あるスポーツの中で、サーフィンの持つ唯一の特徴は、「フィールドが動く」という点です。サッカーでも野球でも、選手たちが動く場所は不動です。しかし、サーフィンだけは波が相手ですから、一刻も同じ場所はありません。波を読み、波に乗る。私たちはかつてない変化の時代に生きています。波乗りのような、変化が常態の現在のビジネス環境を指して私は、「ビジネスサーフィンの時代」と呼んでいます。
 
さて、「業界」を英語でいうと「business fi eld」。ビジネスサーフィンの時代、業界そのものも常に変化し続けています。伝統的マーケティングでいうところの「業界」や「競合」の概念が陳腐化しているのです。かつてのビジネスは、競合他社と決まったフィールドの中で顧客争奪をやっていました。競合要因の価格、製品品質、顧客サービスなどでしのぎを削る。ところが現在、「閉じた業界の輪の外」からプレイヤーが参入し、へたすると業界そのものが壊れてしまうケースが生まれてきています。この、K −1のような異種格闘技的な「予想していなかった好敵手」の登場こそが、新しいビジネス世界の特徴の一つです。これを「K −1ビジネス」と呼んでみましょう。


K−1ビジネスの事例集

倉敷・児島地区のジーンズ産業に大きな打撃を与えたのは、ジーンズメーカーではありませんでした。ユニクロでした。

「K−1」ビジネス環境において、街角の女性専用スポーツクラブの顧客を奪うのは同業他社ではなく、Wii fi t Plusというソフトウェアである可能性は高いと思います。
 
昨日話したパチンコ店の経営者は、近隣の同業店よりゲームが手ごわいライバルで、「(ゲームのような)デジタルではできないリアル体験を充実させることこそが次の戦略だ」と言っていました。
 
パナソニックの補聴器ONWAモデルJJは、従来の補聴器の逆を行く製品デザインでヒットしました。1878(明治10)年に原型ができた補聴器は、医療機器として製品人生をスタートしています。メーカーは「なるべく目立たないように小さく」「肌に近い色に」することへデザインの焦点を合わせ、開発努力を重ねてきました。ところが、当の顧客である高齢者たちにとっては「年寄くさい」と不評だったのです。パナソニックは補聴器を医療機器ではなくオーディオプレイヤーへとリ・ポジショニングしました。すると、街行く若者たちが耳にしている携帯プレイヤーと同じイヤホンデザインでいいのでは、という新しいデザインコンセプトにゆきついたのです。小型化する必要がないからコストも安く製造できます。売価を4分の1に抑えることができました。
 
パナソニックの補聴器は50年の歴史を持っていますので「異業種からの参入」ではありませんが、補聴器のフィールドにおける常識を無視することによって、顧客に歓迎される価値創造、製品開発に成功したわけです。
 
岐阜県にある岩田鉄工所は精密加工、精密機械加工、試作を営業品目にしているB2B企業ですが、社長が開発マインドあふれる人で、世界初の電動伸縮杖「伸助さん」を作りました。手元スイッチ1つの操作によってミリ単位で杖が伸縮するため、階段の上り下りでも姿勢を傾けることなく安全です。従来の杖は階段の上り下りでいちいち長さを調整するのが面倒なため、つい高齢者が杖の長さに合わせていたのですが、前のめりになったりして危険でした。生産財メーカーが、高齢者向け一般消費財を開発したわけで、「異業種プレイヤー」です。
 
私がiPhoneを買っても、ドコモケータイをまだ持っている理由は、通信機能ではなくお財布ケータイ機能という金融サービス一点です。つまり、携帯電話に期待される機能が通信のみならず、金融サービスにまで拡張してきているわけです。


どうすればいいか

このようにK −1ビジネスでは、「敵」がどこから攻めてくるか予想がつきません。まるで見えないウィルスの拡散に怯えるような気持ちになるかもしれませんね。でも大丈夫、対処法はあります。常に自社のビジネスを製品、サービスで定義するのではなく、「すること=顧客に何の便宜や価値を提供しているのか」によって定義するのです。顧客目線で自社製品・サービスを見直すクセを付けましょう。きっとヒントを発見できますよ。

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(2010年4月1日号掲載)