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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

140) ウッフィー戦略

マーケティング講座

こんにちは! 阪本啓一です。
JOYとWOWを!


「doing」から「being」へ

唐突ですが、あなたのビジネスは何ですか? と質問されたら、何と答えますか? 「うどんを作っています」「Tシャツを売っています」…、いずれも「doing」によるビジネスの定義ですね。自社の製品、サービスによる定義です。しかし、顧客が受け取る価値で考えるとどうなるでしょう。「おいしいランチタイムをうどんで」「大人の男がシャツの襟で見せられるようなTシャツを提供」。こうなると世界との交流方法「being」による定義になります。これこそが、ブランド化の基本です。

ドラッカーが繰り返し説くように、ビジネスは顧客のニーズ(欲求)を満たすところから出発しなければなりません。自分が何を売りたいかではなく、何なら買ってくれるかを考える。そして、現在のビジネス環境は高速で刻々と変化しています。まさに変化が常態のビジネス・サーフィン。

では、顧客は何を求めているのか。現在のネット社会におけるビジネスのあり方について考えてみます。


共感・共鳴・感動

ネットがここまで生活の隅々にまで織り込まれていくと、まさにネットが人体における毛細血管のようなものになっています。自然、ビジネスが経済活動だけのものではなくなります。社会的な色彩を持たざるを得ません。人間的な要素、即ち、「楽しいね、嬉しいね」といった共感、共鳴、感動を与えてくれるビジネスが顧客からの評価をもらいます。

そうなると、売上高、利益、ROI、ROE、市場占有率などのいわゆる20世紀のビジネスの語彙と文法だけでは、戦略一つ立てられません。ソーシャル・キャピタル(社会資本)のコンセプトが生まれたのもその辺りの社会背景に理由があるのでしょう。


ウッフィー(Whuffie)

ドルや円、バーツといった貨幣をマーケット・キャピタル(市場資本)と呼びます。それに対して、ソーシャル・キャピタル「ウッフィー(Whuffi e)」という仮想通貨が話題になっています。作家のコリィ・ドクトロウの小説『マジック・キングダムで落ちぶれて』(Down and Out in the Magic Kingdom/邦訳 ハヤカワ文庫)に由来します。ウッフィーは仮想通貨のため、現実の通貨では買いたくても買えません。そして、徹底的に利他的な性質を持っています。誰か他人のお役に立つ、貢献する、評価される、尊敬を受ける、信頼を得る、感謝される、JOY(喜び)、WOW(感動)…、いわゆる日本語でいうところの「徳を積む」と、対価としてウッフィーが増える仕組みになっているのです。この姿勢はTwitterをはじめとするソーシャル・ネットワーキングの中では不文律になっています。現実のお金は貯金できますが、ウッフィーはできません。なぜなら、自分の中にあるのではなく他者の中にあり、自分ではコントロールできないから。「徳を積む」イメージで、コツコツ何かによって貢献していることで、誰かのこころの中にあなたのウッフィーが蓄積されていく。つまり、誰かのこころの中でしか生きられないわけです。

ウッフィーは先払いしておくと、後で現実のお金が入ってくる仕組みになっています。例えば、昨年末、期間限定でダスキンはTwitter上で「大掃除のコツ」を披露しました。参加者からの質問に丁寧に答えていったのです。たとえば、「浴室のガラスの曇りを落とすときはジーンズの端切れが良いですよ」といったようなQ&Aを丁寧に実行したのです。この段階では無料ですからダスキンへは現金は入ってきません。しかし、その分ウッフィーを積むことができました。Twitterと現実の業績との関連はまだ検証できていないようですが、私は確実に生活者からのダスキンブランドへのウッフィーは増え、「ブランド選択の基準」になったと見ています。ダスキンは「掃除サービスを販売しています」ではなく「生活者の掃除の悩みを解決します」とあり方(being)を明確にしているのでしょう。結果として、生活者のこころの中でウッフィー・リッチなポジショニングを獲得することに成功したのです。

自社が顧客に提供できる価値にフォーカスする。その価値で何のお役立ちができるか考え、実行する。これによってまずウッフィーを獲得しましょう。利益は必ずついてきます。

参考:ツイッターノミクス タラ・ハント
    村井章子訳 文藝春秋刊

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(2010年5月16日掲載)