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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

144) サムシング・ニューの鉄則

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
戦略とは捨てることです。


店を増やすと傾く法則

最寄の駅に急ぎ歩いていた ら、どこかで見たような看板 が。何と、海沿いの不便な場所 にあったケーキ屋さんです。電 車に乗り込み、iPhoneを使って ネットで調べたところによる と、海沿いの本店のほか、市内 に2店舗既に出店しており、そ してこの度駅前にも出店したと のことです。私は、iPhoneのス クリーンを見ながら嘆息してし まいました。「これでこの店も 傾いてしまうな…」。

それから1年。私の悪い予感 は的中し、くだんのケーキ屋さ んは3店舗を閉鎖、本店のみに なりました。経営状況を知るよ しもないのですが、だいたい推 測はつきます。私は長年の経験 から、「店を増やすと経営が傾く 法則」というものを持っている のです。資本や金融資産の豊富 な大企業のチェーン展開などは 別ですよ。基本、オーナーが経 営しているような小さなお店に 当てはまる法則なのです。理由 は簡単で、「成長の定義を間違っ ている」ことが多いからです。 この店の場合は、不便をおして 行くことに価値がありました。


成長の定義とは

正しい成長の定義は、「量が 増えること」ではなく、「新しい ことをする」です。店を増やし たくなるのは、繁盛して、儲かっ ている時。お客様が開店前から 行列したり、「いつ行っても満 員」という街の噂になったりし 始めた頃です。こうなると、グ ルメ雑誌で有名人が「お気に入 りの店」といった記事を写真付 きで掲載したりします。ここで 経営者は勘違いしてしまうので す。

本来は量ではなく、質を問わ ねばなりません。繁盛している 時こそ、「なぜお客様は来てく れるのか」という来店動機の研 究、「今の味を維持し続けるこ とが良いのか」という商品の研 究、「接客技術に改善の余地はな いか」というサービスの研究、 「うちのお客様はほかにどんな お店で買い物をしているのか」 という顧客ライフスタイルの研 究、「商品開発の可能性はない か」などなど、やるべきことは 山のようにあります。良い時こ そ、こういう「質的なこと」に時 間を注ぐべきなのです。


質が量を規定する

ところが、経営者が目を向け るのはたいてい、「多店舗展開」 「そのための資金準備」「人材の 確保」といった「量的なこと」で す。量的マターが経営改善につ ながることはありません。順番 は、まず「質の設計」、その後「量 の設計」です。逆ではないので す。

たとえば、資金が潤沢に手当 てできるとします。代表的な 「量マター」ですね。しかるに、 お金があるからできることとい うものは、実は、ありません。少 しだけならある、というのでは なく、皆無なのです。いやいや、 事業の内容を良くするために お金がいるではないか、とおっ しゃるかもしれませんが、お金 が助けになるのは財務的な面 でして、商売に最も重要で明日 を作る顧客との接点(商品や接 客)の「何に」使うのかが先に決 定されていない限り、質的には 有効な使い道がないのです。ほ ら、よくあるじゃないですか、 悪名高い、年度末の本当に必要 かどうかわからないお役所の 土木工事発注。あれこそまさに 「お金が先にありき」が原因で、 何ら有効な結果をもたらさない 好事例です。


内容を良くする

スポーツの試合が終わった後 の振り返りで「勝負には負けて しまったけど、内容は良かった よね」ということがあります。 経営でも同じことです。重要な ことは、「内容を良くする」こと です。成長そのものには何ら質 的な意味はありません。

内容を良くするには、成長の 定義に戻りましょう。成長の定 義は「新しいことをする」。常に 新しいことにトライしましょ う。たとえば、かのスターバッ クスでも、あれほどの成功をお さめながら、常に新しいこと をやっています(日本市場の事 例)。最近ではオフィスで飲め るようなスティック状のインス タントコーヒー(VIA)を出 しました。

「日に新たに、日日に新たに、 また日に新たならん」とは『大 学』の言葉です。私はこれを手 帳に書き付け、毎日眺めること を習慣にしています。「新」とい う文字は立ち木に労力を加え て切り倒し木材にすることを 意味しています。常に新しい ことを生み出す意欲と心がけ。 Something new…、ビジネスの 鉄則ではないでしょうか。量で はなく質的な「新」を絶えず生 み出し続けましょう。

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(2010年7月16日掲載)