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現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

178)共感ポイントを探る

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
「時代を読む」とは?


時代と共に

私の手元に、何度見ても飽きないDVDがあります。『The Coca-Cola TVCF Chronicles』1(1962−1989)と2(1979 −1999)。

日本で一番最初にコカ・コーラがテレビコマーシャルを放映した62年頃の歌詞には、「コカ・コーラを冷やして」「スカッと爽やか」の2つのフレーズが必ず入っています。私のブランド論でいうところの「機能ゾーン」、つまり、「コーラという日本人にはまったく馴染みのない新しいソフトドリンクの機能を教育する」目的があるのです。顧客を「教育する」というと「上から目線」的に聞こえるかもしれませんが、一般的に馴染みの薄い製品・サービスで新市場を形成しようというマーケティングではとても重要な営みです。


当時、日本の一般家庭に冷蔵庫は十分普及しておらず、氷で冷やすタイプの物があるのが関の山でした。だから「冷やす」という「製品の使い方」を説明する必要があったのです。また、コーラの味も日本人には斬新でした。それまでの日本のソフトドリンクには「似た味」がありません。三ツ矢サイダーは1884(明治17)年、コカ・コーラの販売開始とされる1886年に先立つこと2年前に生まれていますが、同じ炭酸飲料でも、フレーバー、味がまったく違います。そこで「スカッと爽やか」な味だと言い切ったわけです。私見ですが、「スカッと爽やか」という日本語の形容詞はコカ・コーラが作ったのではないかとさえ思っています(ちなみにこのフレーズは商標登録されています)。

つまり、新たに進出した日本市場において、まずはコーラというソフトドリンクの機能ゾーンをきっちり顧客へ浸透させることを目的としたのです。


機能からブランドゾーンへ

64年頃から「花火」「海」「山(ハイキング)」「バーベキュー」といった、若者のレジャーシーンの中でコーラを飲んでください、という提案になっていきます。つまり、製品を使う場所とシーンを教えているわけです。家でじっとしている時に飲むのではなく、アウトドアで楽しんでください、と。時は高度成長期。団塊の世代の若者たちがあふれていました。日本全体が若く元気で、未来に希望を持てた時代。コカ・コーラは時代の空気を確実に読み、提案していきます。そして当時人気絶頂の若大将こと加山雄三を始め、ワイルドワンズなど、若者の共感を呼ぶアイドルを起用します。

このあたりでコカ・コーラのメッセージが機能ゾーンからブランドゾーンへと移行していきました。ブランドゾーンは、言い換えれば「共感ポイント」で、「ブランドが選ばれる理由」となるものです。つまり、この後のコマーシャルを見れば、時代の共感ポイントがわかるのです。たとえば72年の歌詞には「自然に帰れ」「人間は人間さ」が入っており、当時のヒッピーたちのメッセージを映しています。


共感ポイントの変遷

80年代後半になると、若い会社員たちがオフィスで、あるいはオフタイムにコカ・コーラを楽しむ姿が描かれます。私はちょうど同世代なのでわかるのですが、当時の自分を思い出してみると、そこで描かれている若者像は「時代をちょっと先に行っている人たち」です。服装にしてもライフスタイルにしても。つまり、「時代の半歩先」こそが当時(80年代)の共感ポイントになっているのです。


これが時代を経ていくにつれ、「等身大」になっていきます。「フツーの日常の中にコカ・コーラがある」シーンに共感ポイントが移っています。91年の歌詞には「いつもの自分を取り戻したいと感じたら」があります。マーケティングは、生活者・顧客の心を動かす営みです。動かすためのスイッチは「共感」。つまり、時代の共感ポイントがどこにあるのかを探し当て、そこに的を絞ってコピーやメッセージを作る。


コカ・コーラの機能ゾーン(味)は120年変わっていませんが、時代と共に変わっているのがブランドゾーン。皆さんのブランドも、時代を反映したメッセージ発信していきましょう。そのために、時代の共感ポイントを探り当てる必要があります。「売れている商品」「人でにぎわっている街のスポット」「繁盛しているレストラン」を自ら体験、分析する習慣を付けましょう。売れたり繁盛したりしている「理由」を分析するのです。それこそが、共感ポイントです。


(2011年12月16日号掲載)