働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

195)破壊を恐れない

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。

雨降って地固まる!


全滅の効用

JOYWOW横浜オフィス窓から、みなとのみえる丘公園の緑が見えます。鮮やかな緑の中に、茶色でくすんだ色合いが所々見えます。そこだけ、まるで「死んでしまった」かのような、哀しい色合い。原因は台風による暴風で海水が吹き上がり、塩分を含んだ雨が降りかかったことにあります。台風一過はいいのですが、雨があがった途端に晴れると、塩分は葉の水分を吸い取ってしまう。だから枯れてしまうのです。

この事情は沖縄などでもよくある話のようで、例えばマンゴー農家は何年かごとにマンゴーがやられてしまって、全滅しちゃうそうです。保険で何とか切り抜けられますが、経済的にも大変です。しかし、大変でも、定期的に全滅しないといけないようなのです。なぜなら、全滅のおかげで、木に住みついた害虫もまた、全滅するから。これがないと、虫に木が全滅させられる。卵が産みつけられたりして。松にも松食い虫がいて、放っておくと松を食べ尽くす。駆逐は大変だけど、台風が来ると虫もやられてしまうから、助かる。

このように、自然界には「全滅の効用」といったものがあるようです。この話を聞きながら、ビジネスにも適用できる話だなぁと思いました。


あるパン屋さんの話

特に名前は伏せます。パン屋さんの話です。地域でおいしいと評判のお店。開店して5年経ったある時、背景となる事情はわかりませんが、ある巨大資本が出資し、経営に参画することになりました(それだけ人気店だという証左です)。たちまち支店を5つ、出しました。本店を拡張し、レストランを併設、モーニングサービス、ランチ、ディナーも供するように。


1年も経たないうちに、悪い評判が立ち始めました。「パンの味が落ちた」という。「ただのチェーン店になっちゃったね」なんて書くブロガーもいました。


以来3年。この3年は、そのパン屋さんのブランドが凋落していく3年でした。5つあった支店は一つ、また一つと撤退。5年かけて作ったブランドが、3年でゼロに落ちてしまったのです。巨大資本は手を引き、最後に残った本店には「閉店のお知らせ」が。工事が入ったのでてっきり潰れちゃったんだと思い込んでいたら、先日、新装オープンしていました!事情を聞くと、資本撤退後、創業メンバーが心機一転、自分たちのお金で開業したとのことです。創業時からいたパン職人、資本が入って拡大路線になった時に店を辞めたのですが、このたび再び戻ってきました。お客さんの反応は、大歓迎です。パンにおいしさが戻り、「自分たちの手の届く範囲で」商売ができる喜びにあふれた店内は、明るくて楽しい空気が満ちています。


破壊をおそれない

パン屋さんの話、多少変更していますが、実際に起こったことです。ここから私は、台風の「全滅の効用」を連想しました。関係者にとってブランドの凋落は我が身を切るほどつらいことだったでしょう。「冗談じゃない」毎日だったと思います。しかし、「全滅」したおかげで、「創業時何がやりたかったのか」「何をやっていたら楽しいのか」「お客さんが望んでいることって何なのか」がはっきりとわかったのではないでしょうか。

もしあなたのお店や会社が今、思うようにいかない、障害物だらけ、という状態だとしたら、ひょっとするとそれって、「うまくいく前兆」なのかもしれません。私も経営者なので経験でわかりますが、うまくいかない時って、驚くほどうまくいかない(笑)。やればやるほど、泥沼にズブズブ足を踏み入れる感覚。恐れないことです。「こうなったら、とことん、行ったろうやないか!」と、むしろ腕まくりしましょう。台風を思い出して。「今、ウチは、台風に遭っているんだ」と。そういう時こそ、じっくり構える。台風は、どんなにきつくても、長く続きません。足跡も爪痕もきついものですが、でも、台風一過。翌朝は、美しい青空を見せてくれます。

希望を持ちましょう。

阪本さんの新著書が発売中!
『ビジネスチャンスに気づく人の57の法則』(日経ビジネス人文庫)

(2012年9月1日号掲載)