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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

202)プチ・イノベーション

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
視点を変えるだけで


お金はかけずに

ブランドとしてお客様の記憶に残り、選ばれるためにはどこにもない「とんがり」が必要です。市場にまったくなかった商品、たとえば、ノンアルコールビールのようなイノベーションは、それだけで強い磁力を発し、お客様から選ばれます。しかしながら、一所懸命リソース(ヒト・モノ・カネ・時間…)をかけても、現代のような潮流の激しく変化する市場環境では、「やっと完成した!」と思ったら、既に時代遅れになってしまっているかもしれません。そうなると、かけたリソース分が損失になります。ギャンブルのような高いリスクに賭けるわけにはいきません。どうするか?私は、「プチ・イノベーション」略して「プチ・イノ」でいいんじゃないか、と考えています。お金を始め、リソースはかかりません。本コラムの194回でも簡単に触れていますが、今回はもう少し深堀りしてみましょう。


数々のプチ・イノ

もともと日本人はプチ・イノが得意です。ただの一枚の布切れをカバンにする風呂敷。もともと店で出していたメニュー「コーヒー」と「トースト」をセットにして「朝食にいかが?」とモーニングセットができました。

見回してみると、他にもプチ・イノ事例は多くあります。

神戸のイタリアンレストラン「ピノッキオ」でピザを頼むと1962年創業以来の累計枚数をナンバリングした小さな紙切れを添えて出してくれます。お客さんは驚き、必ず持って帰ります。そして、小さな紙切れはクチコミの材料になるのです。お客さんが店を広めてくれます。

大阪市のレストラン「瓦町ブラン」は特に女性に人気の店で、夜の予約は2カ月前まで取れません。周囲はビジネス街。仕事帰りに時間があるな、ちょっと寄っていくかとお得意様の男性が思っても予約しないとダメとなると、敷居が高くなってしまいます。「お得意様が来るのに困る店って良くない!」と考えたのが「毎週火曜日はオッサンデー」。その日は予約不可。オッサンか、オッサンが連れた女性1人のみオッケー。「女性はしっかりしているから客単価が上がらない。でもオッサンは飲むし、エエカッコしておごったりして客単価が上がるかもしれない(笑)」。これがオッサンデーを設けた意図かと思い、取材してみたところ、やはり一番の動機は「男性のお得意様からの売上を上げることでした。

マスキングテープはもともと工業・建設現場用製品です。ところが、マスキングテープの「かわいい文具としての魅力」にハマった女性たち3人(ギャラリーカフェ経営、グラフィックデザイナー、コラージュ作家)が、生産材から一般消費財、「かわいい文具」へとポジショニングを転換。売り場も従来のホームセンターからカフェ展示やかわいい文具を売る店舗に変えて売り出したところ、わずか5年で10億円市場に育ちました(www.masking-tape.jp)。

そのほか面白いのが、京都の弁当箱屋さん「Bento&co」(www.bentoandco.jp)。モノとしての弁当箱をただ売るのではなく、「ランチタイムの楽しさ、弁当箱のふたを開けた時のワクワク感」を売っています。このお店のブログ(www.bentoandco.tumblr.com)が文字ではなく写真を主人公にしているのは、外国人にもよく伝わるようにという配慮です。もともと創業者のフランス人ベルトランさんが、子供の頃、日本のアニメやマンガで育ち、中に出てくる「お弁当」に衝撃を受けたのが発端といいます。ご存知のように、外国には、日本のお弁当のような、「おかずがかわいく肩寄せ合って並んでいる」ようなお弁当文化がありません。そこで、弁当箱を通じて日本の楽しいお弁当文化を海外に輸出しているのです。素敵なプチ・イノです。


視点を変えてみる

ぜひ、社内でプチ・イノ会議を開いてみて下さい。視点を変えてみるだけで、お金をかけずにできることは多くあります。付箋をたくさん用意し、全員がアイデアを出し合います。社内が一つになる効果もありますよ!

阪本さんの新著書が発売中!
『「たった1人」を確実に振り向
かせると、100万人に届く。』

(日本実業出版社)
定価:1470円(税込)


(2012年12月16日号掲載)