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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

206)ライフスタイルを創る

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
生活をデザインしましょう。


エジソンには不要だった?

ウォシュレットはTOTOが開発した世界に誇る名品です。 ニューヨークに住み始めた当座、 何かもの足りない思いをしたのですが、 よく考えたら自宅トイレにウォシュレットがないことでした。 マドンナが 「来日して何が一番楽しみですか?」 とインタビュアーに聞かれ、 「ウォシュレットが使えること」 と言ったそうです (真偽のほどは不明 (笑) ) 。 ちなみに 「ウォシュレット」 はTOTOのブランド名ですが、 ホチキスやサランラップのように普通名詞化しています。 ブランドが企業の手を離れ、 一人歩きしている証左ですね。

さて、 このウォシュレット、技術的に因数分解すると、 ノズルが前後に動く動力、 水を温める熱源の2つで成り立っています。 この技術、 実はエジソン (1847〜1931)存命中に既に可能なもの。 にもかかわらず、 なぜエジソンは発明しなかったのか?

この問いに答えるためには、 「ウォシュレットのしてくれること」 つまり、 「価値」 について考えねばなりません。答えは 「おしりを洗う」 。 つまり、 ウォシュレットは、 おしりを洗うという生活習慣を生み出したのです。 TOTOによれば、 日本人におしりを洗う習慣が定着したのは80年の発売以来、15年かかったといいます。 習慣は繰り返されて文化になります。 いまやおしりを洗うのは日本文化になりました。 TOTOはウォシュレットという製品を通じて、日本に新しい文化を生み、 定着させたわけです。


「習慣」 を考える

Googleは 「検索」 を一つの文化にまで仕上げました。 検索することがビジネスにつながるし、 検索が容易になることで勉強の方法まで (良きにつけ悪しきにつけ) 変えてしまいました。 図書館に行って調べる代わりに、 ネットでちょちょいと検索するだけである程度の情報なら手に入ってしまいます。

iTunesは音楽の購買文化を新しく創り出しました。 生活者はCDというハードが欲しいのではなく、 その中に記録されている音楽が欲しいだけ。 だったらデジタル情報をダイレクトにダウンロードできるようにすればいい、 という発想です。

ウォシュレット、Google、iTunesのような 「大きな話」にならないまでも、 繁盛しているお店はそこのファン顧客にとって 「わが家の習慣」 になっています。 例えば、 拙宅近所の商店街にある餃子屋さん。 たまにそこの餃子を買って帰り、 家で温め直してみんなで囲むのですが、 普段みんな忙しく滅多に夕食を囲むことができないわが家にとっては、 団らんの習慣を演出してくれる大事なお店です。

ある友人は、 子供の誕生日には近所の写真館で家族全員で写真を撮ることにしています。 理由は、 その写真館で撮ると、 全員が 「点数上がる写真写り」 に仕上がるからだそうです (笑) 。 また、 ある知人は、「世界の珈琲めぐり」 という、毎月、 世界の珈琲が届く通販サービスを利用しています。届いた日には実家へ家族みんな (両親にとっては孫たちに会える!) で行って珈琲を楽しむ習慣にしています。 私が大阪で取引先に行くときの手土産には、 駅前にあるお菓子屋さんのプチシュークリームと決めています。 注文してから一つずつ目の前でクリームを注入してくれるので、 新鮮な感じがするからです。


ライフスタイルを創り出す

日常生活の中の、 「ちょっとした習慣」 の中に入り込む何か。 それを提案 ・提供できればいいわけです。 そのためには、 お店サイドが 「うちは○○屋だから…」 というように、 売っている商品 「○○」(例えばパン、 エステなど) で自社の存在理由を定義しないことが重要になってきます。「お客様の生活でどんな習慣を創り出したいのか」 を考える。 つまり、 商品ではなく習慣を販売する。 習慣が繰り返されれば、 やがて文化になります。 つまりライフスタイルを生み出すわけです。

※参考: 『新しい市場のつくりかた』 (三宅秀道/東洋経済新報社) 、 『世界一のトイレウォシュレット開発物語』 林良祐/朝日新書)

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(2013年2月16日号掲載)