働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

209)人にともなうエネルギー

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
やはり「人」です!


ネットとリアルの違い

今やネットで何でも買えます。近所のスーパーやコンビニで買うのが当たり前と思っていたインスタントカップ麺さえ、「激安価格&配送料無料!」で買えます。

ネットとリアル店舗の違いを整理しておきましょう。
●ネット…録画。映画やドラマの世界。強みは蓄積、編集ができること。
●リアル…ライブ。コンサートや芝居の世界。強みは人にともなうエネルギーを直接、顧客とやりとりできること。

ネット隆盛のご時世、リアル店舗で繁盛するには、ネットショップ以上の商品知識と提案力、そして、顧客と接触する「人」の魅力が重要です。


待っていた!

その日、私は妻と映画を観に行く約束をしていました。待ち合わせ場所で会った彼女はうれしそう。聞けば、以前から気になっていたブランドでルームフレグランスなどを買えたとのこと。スタッフのEさんがとてもいい人で、話が弾み、楽しかったということをシネマコンプレックスに向かって歩きながらウキウキと話します。これから映画に行くこと、映画はイ・ビョンホン主演『王になった男』であることを話したら、Eさんもイ・ビョンホンの大ファンで、盛り上がったそうです。

話しながら袋から商品を取り出して、私に見せようとして、妻は「?」という表情になりました。「どうしたの?」と尋ねると、「ううん」。

私たちが行くシネコンはJR大阪三越伊勢丹が入っている高層ビルの屋上庭園を通りぬけた先にエントランスがあります。「楽しい人だった」「良かったね」と2人で話しながらシネコンのエントランスへ向かっていると、はるか向こうの方から走ってくる女性がいます。「阪本さま〜!」今まさに話題にしていたブランド・スタッフEさんです


私の責任です

どうやら妻は違う商品を買っていたようで、先ほどの「?」という表情はそれに気が付いたものでした。本来、フェイシャルマッサージオイルを買うはずだったのが、Eさんの手違いで、ジェルが袋に入っていたのでした。妻は代金を支払う時に「高いかも?」と思ったそうですが、そこは天然な彼女のこと(笑)、「ま、いっか」とそのままやってきた。Eさんは後で間違いに気が付いたのでした。

先ほど「これからイ・ビョンホンの映画に行く」と言っていたからと、慌ててシネコンに飛んできて(彼女のいる百貨店とシネコンまではどんなに急いでも15分はかかります)、待っていたわけです。

もう、この世の終わりかというくらい恐縮して平身低頭謝ります。私と妻は感動しました。「このジェルも今度買おうと思っていたから構わない。映画を観た後で店に寄って、フェイシャルマッサージオイルも買います。そんなに謝ってもらわなくても大丈夫だから」と妻。もうこの段階で、私たちは「ブランド」ではなく「Eさん」のファンになりました。


ハガキも用意

映画を楽しんだ後、約束通り、ブランド店舗へ行きました。Eさん、平身低頭。「私のミスなのに、三越伊勢丹からここまでわざわざお出ましいただくなんて…」。フェイシャルマッサージオイルを買うと、袋の中に、Eさんの手書きのハガキが入っていました。お詫びの言葉がびっしり並んでいます。もうこれでノックアウトです。

Eさんは妻に電話をしても、妻からの連絡を待っても良かった。しかし、「それは自分が許さない」のでしょう。Eさんは製品ではなく、ブランドの価値を伝える人です。これこそが「人にともなうエネルギー」を顧客に伝える、リアル店舗スタッフの役割。Eさんの行動がイヤミにならないのは、彼女の行動がすべてマニュアルではなく、「思い」から出ているからです。

ネットで何でも買える時代だからこそ、「あの人に会いに行こう、相談してみよう」という人のパワーが何にも増して重要です。仮に将来Eさんがカーディーラーに転職したとしたら、阪本家は、Eさんから車を買おうと思います。


阪本さんの新著書が発売中!
『「たった1人」を確実に振り向
かせると、100万人に届く。』

(日本実業出版社)
定価:1470円(税込)


(2013年4月1日号掲載)