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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

214)アウト会議

マーケティング講座

こんにちは!阪本啓一です。
失敗こそ、お金を生みます


1分お待ちください

友人と夕食後軽く飲んでいこうかと、レストランと同じビルの最上階にある、展望が売りのバーへ行きました。

自動ドアが開いて、中に入ると、男性スタッフが1人、ドアに背中を向け、インカム(ヘッドフォンとマイクが一つになっている無線機器)で何か熱心に話しており、私たちに気付かない様子。ようやく気付いた彼に「予約はしていないのですが、2人です」と伝えました。彼はうなずいた後も、そのままインカムで話し続けます。そして30秒ほどたった頃、目の前にあるソファーを指し、「1分お待ちください。すぐにお席へご案内しますので」と言ったかと思うとすぐに背中を向け、また話し出しました。一体何が起こったのだろう?どこかで緊急事態が発生したのだろうか。しばらく座って待っていましたが、彼のお尻をえんえん見続けるのもばかばかしくなり、友人の顔を見ると彼女も私と同意見の顔。そこで黙って立ち、店を出ました。

「待たされる」のは構わないのです、予約していないのだから。しかしカチンときたのは、彼の態度がアウトなこと。どこがアウトかを分析してみると、ゝ劼鯡技襪靴謄ぅ鵐ムで話し続ける、△困辰箸尻を向けている、「1分お待ちください」が小賢しい(笑)。顧客というものは難しいものです。2人分の今日の売上を失ったばかりか、今後永遠にこの店は私たち2人(とその仲間たち)からの売上を失ったのです。ただ、もっと重要かつ深刻なことは、今日のこのアウトな経験を組織の学びへと転換する仕組みがないであろうことです。

バーにとって、いま目の前の2人の売上を失ったという現象しか見えていないし、記録もされません。そう、売上は記録されますが(POSレジなどで)、失った売上は、どこにも残らないことがビジネスのコワさなのです。だからこそ、アウト会議が必要です。


アウト会議

アウトな経験を組織の学びへと転換する仕組み、これをアウト会議と言います。わかりやすく言えば「失敗分析会議」ですね。日清食品では、失敗したブランドの失敗要因を分析する解剖会議という制度があります。「商品コンセプトは正しかったか」「ネーミングとパッケージ・デザインは受け入れられたか」「拡販費は適正に処理されたか」…と、すべて具体的なデータを示した上で分析されます。

スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授は、シリコンバレーの強さの秘密を「失敗をイノベーションのプロセスの一部として、当然のことと受け入れられていること」とし、「失敗のレジュメを書く」習慣を推奨しています。

週に一度でいいので、お店や会社で「自分がアウトだと思ったこと」を交換するミーティングを持ちましょう。その中に、「顧客から○○はありますか?」と言われてなかった商品についての報告も含みます。お客さんを怒らせてしまったという、わかりやすい事例ももちろんですが、「トイレがいつも混み合っていてどうにかならんか」「電話がいつも話し中でつながらない」といった、すぐには解決できそうもない事例も含みます。何でもあり、とにかくアウトだと思ったことをすべて。


クレームこそ宝

ネット書店のコミコミスタジオ(www.comicomi-studio.com)は、顧客からのクレームを最重視しています。愛があるからこそ言ってくれると、クレームをもとに顧客データを日々更新しています。

「Aさんは郵便ポストが家の外にあるから本の包装は厳重にしよう」「Bさんは本の汚れが気になる人だから発送前にカバーを外して本体もチェックしよう」。いずれも「雨が包装紙にしみこんで濡れていた」「本の汚れが気になる」といったクレームへ真剣に向き合った結果、得られた顧客情報です。こうして顧客は「自分のことをわかってくれている!」マイ・ブランドとして同店をひいきにし、ほかのネット書店でも売っている本であるにもかかわらず、買い続けてくれるのです。

アウト会議、ぜひ実施してくださいね!

阪本さんの新著書が発売中!
『「たった1人」を確実に振り向
かせると、100万人に届く。』

(日本実業出版社)
定価:1470円(税込)

(2013年6月16日号掲載)