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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

【第8回】明確な目標を設定すると驚くほど達成に向けて努力するアメリカ人

アメリカ人と共に働く技術

増田義彦◎2004 年渡米。某日系IT企業社長を歴任。Children Discovery Museum of San Jose 元理事。Japan Business Association of Southern California元会長。オーロラ日本語奨学金基金会長。

アメリカで10年間、数百人のアメリカ人の指揮を執ってきた日本人社長が、アメリカ人と働く極意を伝授します。


明確な目標を設定すると驚くほど達成に向けて努力するアメリカ人

アメリカ人は、目標を明確にしてあげないと仕事をしにくいようです。特に年度末になると、「来年の会社の目標は何ですか?」という質問が、直接の部下から寄せられます。そんなときには、「会社の目標は自分一人で決めるよりも、幹部も入れてブレインストーミングをして決めた方が良いだろう」ということで、目標設定のための幹部会議を設定します。すると、そうした会議は日本人が想定しているものと随分と違ったものになります。私が経験した相違点を3つほど挙げてみます。

第一に、まず議論を開始しようとすると「日本の親会社の目標は何ですか?」という質問が出ることが多いです。「我々の会社は子会社であり、親会社の目標を達成することが子会社の使命なので、親会社の目標が分からないと自分達の目標は設定不可能」というロジックです。これはもっともなのですが、残念ながら親会社の上司に問い合わせると、「目標なんてまだ設定してないよ…」という回答が返ってくることが多いのが現実です。たまに目標が設定されていても、「真のグローバルカンパニーになる」や「笑顔で努力する」など、翻訳不可能、あるいは説明不可能な目標であることが多いです。日本では自分の会社や部門の目標を設定することにさほど重要性を見出していませんし、ましてや子会社にわかりやさしく説明しようという意識はまだまだ希薄です。

第二に、目標(Objective)の議論を始めると、「それはObjectiveではなく、Missionだ」とか、「いやいやそれは、Visionだ」とか、やたらと言葉の定義にこだわる部下が出てきます。そのうち、Mission、Vision、Value、Objective、Strategyなどの言葉の違いをレクチャーしてくれる輩が出てきたりします。しかし、アメリカ人もそれほどこれらの違いを明確に理解しているわけではなく、人によって定義はさまざま。どうも、Mission、Vision、ValueなどがObjectiveの上位概念で、これらが決まっていないと目標(Objective)が立てられないらしいのです。親会社の目標がないと自分たちの目標が立てられないのと同じです。要するにアメリカ人は、自分たちの目標の上位概念がしっかり決まっていないと目標が立てられないのです。


全社目標は社長がまず骨格を作ることが重要

第三に、会社の目標設定は社長の仕事と思っており、なぜ会社の目標を決める会議に巻き込まれなければならないのか理解できないようです。日本では、各本部の目標は、トップである本部長が独断で決めるのではなく、本部の複数の幹部が集まって合議して決めていました。しかし、アメリカでは、会社の目標(全社目標)は、トップである社長が決めることが期待されています。全社目標を社長一人で決めるアメリカ流と、合議制で決める日本流には、それぞれ長所・短所があります。私は、日本の良いところを取り入れて、合議制を定着させようとしました。しかし、その場合でも、アメリカ流の良いところも取り入れて、目標の骨格は私から示すようにしました。

最後に、アメリカ人は目標を明確に与えると、びっくりするほどその達成に向けて努力します。ただし、日本人のように、目標がなくても上司の期待をおもんぱかって仕事をするのが苦手です。ですから、目標をいかにうまく設定するかが、成否を左右する鍵と言っても良いでしょう。

アメリカ人は、クリエイティブですし、自分の考えを述べることに日本人ほど躊躇しません。ただし、全社目標のような大きな話題では、社長のガイダンスや上位概念なしに自分の考えを述べるのは、さすがに躊躇するようです。目標設定に際しては、こうしたアメリカ人の心理を理解して、対応することが重要です。


(2014年11月16日号)