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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

【第3回】全従業員に会社の戦略や目標を伝える「All Hands Meeting」の上手な運用法

アメリカ人と共に働く技術

増田義彦◎2004 年渡米。某日系IT企業社長を歴任。Children Discovery Museum of San Jose 元理事。Japan Business Association of Southern California元会長。オーロラ日本語奨学金基金会長。

アメリカで10年間、数百人のアメリカ人の指揮を執ってきた日本人社長が、アメリカ人と働く極意を伝授します。


全従業員に会社の戦略や目標を伝える「All Hands Meeting」の上手な運用法

前回は、戦略や目標を策定するための「Offsite Meeting」についてお話ししましたが、次の段階として、その目標をしっかりと従業員に伝えて浸透させていく必要があります。

私は四半期に1回、全従業員を集めて四半期ごとの目標を説明しています。私の会社ではこれを「All Hands Meeting」と呼んでいます。日本にいたときも、四半期に1回、本部に所属する幹部社員を集めて、幹部社員集会をやっていました。7統括部の統括部長がそれぞれ四半期の目標を報告。一人20分程度、休憩を挟んで3時間程度の会議でした。

最初にアメリカでAll Hands Meetingを実施した際は、基本的にその形式を真似ました。私を含む幹部5名が一人当たり20分話し、全体で約2時間かかりました。私は、10枚程度のパワーポイントに要点をまとめ、20分で終わるようにシナリオもきちんと作成し、練習を繰り返して、本番に備えました。一生懸命でした。家族も巻き込んで練習したのを今でも覚えています。

従業員に業績を少しでも分かりやすく伝えようとして、プレゼンテーションにはたくさんの数値を盛り込みました。数値は万国共通語なので、英語が母国語でなくても比較的簡単に説明できます。ですから、分かってもらおうとすればするほど、数値を中心としたプレゼンテーションになりがちでした。


一方的なプレゼンではなく従業員との会話を楽しむこと

しばらくすると、従業員の間から、「All Hands Meetingの時間が長い」「内容が数値に偏り過ぎ」という苦情が寄せられるように。また、質疑応答の時間をもっと取ってほしいという要望も寄せられました。

そのとき、日本の集会で自分と関係のない部門の話を20分も聞くのは苦痛だったこと、特に数値はよく頭に入らなかったことを思い出しました。せっかくプレゼンテーションをしても、誰も分かっていないのです。それでも、日本では、情報共有という名目でそうした形式的な会議が許されますが、合理性、効率性を求めるアメリカではこうした形式主義は通用しません。

また、質疑応答の時間をたくさん取るのもポイントです。日本の集会では、プレゼンテーションだけで、質疑応答の時間がない場合もあります。アメリカの場合は、プレゼンテーションと質疑応答の時間は、1 : 2程度で、後者に多くの時間を取った方が好評です。

最近のAll Hands Meetingは、プレゼンテーションは5分。私以外に幹部5名が話すので、全体で30分。その後30分〜60分程度を質疑応答に充てています。プレゼンテーションは、試行錯誤の末に、ポイントだけ簡単に記載してパワーポイント1〜2枚を準備、シナリオは骨格だけ考えておき、聴衆の反応を見ながら話すようにしています。

この形式に変えた当初は、従業員側も緊張したのか、あまり質問が出ませんでしたが、数名のさくらを入れてみたら、それをきっかけに多くの従業員から質問が出るようになりました。最近は、質問が多く出過ぎて断るのに苦労しています。

私も最初は、英語の問題もあり、どんな質問が出るのか、うまく答えられるのか、不安でした。でも今は、従業員と直接会話できるこの形式をとても心地良く感じています。従業員が何を感じているかがよく分かりますし、何と言っても、従業員と心が通う感じが良いですね。

プレゼンテーションは、格好良いとか、ユーモアがあるなども大切ですが、短いことと、分かりやすいことの2点が一番重要。そして、プレゼンテーションの倍の時間を従業員との質疑応答に充てて、この時間を心から楽しむのがコツ。社長が楽しそうだと、従業員も安心するようです。


(2014年9月1日号)