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アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

【最終回】全体最適よりも部分最適を優先するアメリカ人をどう捉えるか

アメリカ人と共に働く技術

増田義彦◎2004 年渡米。某日系IT企業社長を歴任。Children Discovery Museum of San Jose 元理事。Japan Business Association of Southern California元会長。オーロラ日本語奨学金基金会長。

アメリカで10年間、数百人のアメリカ人の指揮を執ってきた日本人社長が、アメリカ人と働く極意を伝授します。


全体最適よりも部分最適を優先するアメリカ人をどう捉えるか

さて、最終回の今回は、日本人は全体最適、アメリカ人は部分最適を追求する傾向があることについて、いくつか例を挙げたいと思います。

例えば、米国内に子会社が2つあり、それぞれ工場を持っているケースで考えてみましょう。どちらもビジネスが縮小傾向で、工場を統合する必要があるとします。こうした案件を日本人に任せると、それぞれの会社の日本人が協力し、「会社全体で見てどちらの工場に統合した方が良いか」という観点での検討をします。その結果、結論が出れば、たとえ自部門に不利な結論でも従います。これが米国人だと、「両社が協力して全体最適の観点から話し合おう」という機運は生まれません。自分の部門にとって有利な案を主張するだけです。まさに部分最適です。

一つの会社の中でもそうです。日本人は、会社全体にとって良い案を最も良い案としますが、アメリカ人は自部門にとって良い案が良い案であり、そもそも「会社全体で見てどうか」という視点がないように感じます。これは、日本の雇用が終身雇用制に基づいていて、短期的に自部門の成果を上げる人より、長期的な視点で会社全体の視点に立って決断できる人が優秀だと見なされるからでしょう。一方、米国では短期的な視点で自部門の成果を上げなければ、クビになってしまいます。

この問題も解決が大変に難しいのですが、米国人の部下にも親会社である日本の会社の考え方を理解してもらう必要があるでしょう。報償の何パーセントかを全社の業績と結び付けるのも一つのやり方です。個人の暮らしぶりを見ても、アメリカ人はアメリカ全体を良くすることよりも自分たちの生活を豊かにすることにものすごいエネルギーを使っていて、その結果として、アメリカ全体が豊かになっているように感じられます。自分たちの生活を豊かにしようというアメリカ人の特性は、「リスクを取ること」「自己主張をすること」そして「お上に頼らないこと」の3点に現れていると思います。


「自己主張」と「リスク」でアメリカ人は豊かになる

私が知るアメリカの人たちは、あまり貯金をせず、リスクを取ってローンを組み、家を買い、ヨットを買い、別荘を買い、人生を楽しんでいます。また、報酬を上げるために、自分がいかに価値があるかを主張します。主張が通らなければ、自分の価値を正しく評価してくれるところへ転職してでも報酬アップを狙います。そして、政府が嫌いで、政府から施しを受けたり税金を取られたりすることを極端に嫌がります。

一方、日本のいわゆる中間層は、金融リスクを取らず、貯金ばかりしているように感じます。これでは消費が伸びず、経済は大きくなりません。また、終身雇用制に慣れ、自分の価値について主張して給与を上げる努力をしないようにも感じます。これでは、いつまでも給料は上昇しません。中間層が豊かにならないのはこういった理由からだと思うのですが、彼らは生活が豊かにならないのは政府のせいだとして、政府が何かしてくれることを期待しています。

少し話がそれてしまいました。私は、四季折々に美しい自然があり、みんなが助け合うことに重きを置く日本が大好きです。そして、広大な大自然があり、家族に重きを置く米国も大好きです。また、日本人とアメリカ人が一緒に仕事をして、素晴らしいものを生み出すことに喜びを感じます。私の雑文が、日本人とアメリカ人がうまく仕事をするためのヒントになれば、これに勝る幸せはありません。

これまで本連載を読んでくださり、ありがとうございました。内容についてなど、皆様からコメントをお寄せいただけたらうれしいです。


(2015年1月16日号)