アメリカで起業独立する
独立・起業マニュアル
(3)起業への道のり【会計編】
個人の資産が守れる法人
「正しい会計をして、正しい利益を出すこと
が重要です」(本郷さん)
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日本にも有限会社や株式会社など、異なった会社組織の種類があるように、アメリカにもさまざまな企業のタイプがある。大きく分けると、Sole Proprietorship、Partnership、Limited Liability Company、Corporationの4つとなる。
Sole Proprietorshipはいわゆる個人営業のことで、Partnershipは文字通りパートナーシップだが、債務責任や事業内容によって異なる種類がある。例えばLimited Liability Partnership(LLP)は、弁護士事務所や会計事務所、建築事務所など、一部の業種に適用されるものだ。Limited Liability Company(LLC)は、日本でいう有限会社のようなもので、Corporationはいわゆる株式会社。ただひと口にCorporationと言っても数種類あり、それぞれ債務責任、税金などの適用が変わる。
まずは会計士に相談する方が良い。起業のタイプによって、何がどう変わるのか、公認会計士の本郷洋子さんに話を聞いた。
「個人営業はビジネスライセンスを取れば始められるので、簡単ですが債務は個人にかかってきます。最近多いのはLLCで、税金などの申請は個人か会社かを選ぶことができます。手続きが簡単な上、費用もかからないので人気がありますが、家族でLLCを作ると、個人営業と同じ扱いになり、個人営業税がかかります。また弁護士や会計士、美容師など、ライセンスを必要とする職業は、LLCを作れません。株式会社を設立するとなると、弁護士に依頼することになります。議事録を作り、株主を決め、設立後も年1回の役員会議を記録するなど、煩雑な手続きが発生しますが、株式会社の決定的な利点は、税率と負債の制限範囲です」。
まず税率の面では、個人営業の場合、税率は個人の収入と同じ扱いで、個人営業税もかかる。一方法人では、経費などを差し引いた純利が課税対象の所得になり、税率もかなり低く抑えられる。また万一、会社が負債を抱えた場合の違いも大きい。個人営業では自宅や自家用車まで失う危険性があるが、株式会社であれば会社が倒産しても、負債は個人にまでかかってこない。
給与税などの経費も考慮
会社を経営すると、実際にどのような経費がかかってくるのかも知っておきたい。
「雇用主になったら給与関係税、つまりソーシャルセキュリティー、メディケア、失業保険を合わせたものがかかってきます。これは連邦税です。その他に、州の給与関係税もかかります。また、労災、障害補償など、会社として入らなければならない保険もあります。また人を雇えば損害補償保険も必要で、テナント契約などの際にもこの保険が必要になります。いずれも税率や保険率は、会社の規模によっても従業員の給与額によっても変わりますが、連邦と州でそれぞれ0・8%から6・24%課税されるものがあります」(本郷さん)。
これらの給与関係税は、1日でも納税期日が過ぎると、約10%の滞納課税がかかってくるので注意したい。他にも義務ではないが、健康保険の負担も検討しなければならないし、従業員を雇うことによって生じる経費は大きい。「時給7ドルで雇用しても、実際に従業員1人にかかる経費は10ドル」と言われる所以だ。
また経営していく上での簿記や給与計算など、専門家に依頼すればその経費が必要になる。簡単な簿記ならば、Quickbooksなどの会計ソフトを購入するという手もあるが、連邦と州への給与関係税の支払い、タックスリターン用のW─2フォームの作成などは、専門知識がないと個人では難しく、やはり専門家に頼らざるを得ない。
「会計士とは、起業時だけではなく、長いお付き合いになりますので、相性が合うかどうかもポイントです。何件かに電話して話を聞き、実際に会ってみることをおすすめします。最初は小さい事務所のほうが親身になってくれることも多いです。会社が大きくなれば大手にシフトしていくと良いでしょう」(本郷さん)。
また日本と貿易をする場合は、日米租税条約などの専門知識が必要になってくるため、会計士を選ぶ時にはその点も確認したい。
最後に、起業に際してのアドバイスを聞いてみた。
「会計原則に則って経理を行い、税金を納めましょう。専門家に相談して節税することと、脱税することとはまったく異なります。伸びる会社は節税した上で税金をきちんと納めています。利潤を国家に還元するのが企業の理念です。正しく会計をして、正しく利益を出して、正しく税金を納める。これが基本です」。
取材協力:辻・本郷税理士法人
www.ht-tax.or.jp
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