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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

Winter Passing

リアルな痛みをフェミニンに描く
とてもパーソナルな物語

ジャンル:ドラマ

オススメ度:☆☆☆☆☆

Rating:R
○出演:ズーイー・デシャネル、エド・ハリス、ウィル・ファレル、他
○監督:アダム・ラップ

©2006 Sony Pictures Classics All Right Reserved

(2006年3月1日号掲載)

ジャンル: バーでのアルバイトとオーディションを繰り返しながら、ニューヨークで無気力かつ自虐的な日々を送る20 代の女優志望のリーズ(デシャネル)。伝説の小説家である父・ドン(ハリス)は、人里離れた場所でひっそりと暮らしており、同じくカリスマ的な作家であった母は他界している。

 ある日、リーズは出版社の編集者から、ドンが亡き母へ書き綴っていたラブレターの出版を1000 万ドルで確約してほしいとのオファーを受ける。こうして生まれ育ったミシガンの家を訪ねたリーズは、ドンの教え子であるシェリー(アメリア・ワーナー)とミュージシャンを目指すコビット(ファレル)に出会うが、変わり果てた父と実家の姿にいわれようのない絶望を覚える。

 実娘であるリーズと、今のドンを支えるシェリー、ドンを異常なほどに慕うコビットの間流れるぎこちない空気の中、傷つけ合う4 人。が、やがてそれぞれの知られざる過去が明らかになるにつれて心を開き始め、お互いに支え合う静かな同居生活が始まる。

さまざまな人生を過ごしてきた大人に見てもらいたい作品

 監督&脚本を担当するラップ監督が、悩みや悲しみ、甘さにあふれる女性の心理を、これほどまで繊細に描写していることに驚きを隠せません。ストーリーの流れはとても静かなのに、誰かの人生に入り込んだように感情移入してしまい、まったく目が離せません。

 リーズが思いついた時、わざと引き出しで強く手をはさむ行為、舞台台詞のような気のきいた言い回しなど、誰かの実体験がなければ決してでき上がることのない脚本だと思います。誰にも理解してもらえるはずがないと、長い間誰にも話すことがなかった深い、深い傷と悲しみと、そこに生まれる小さな幸せを、初めて打ち明けてくれた様子を見ているような気持ちになるのです。

 ヒロイン役を演じるデシャネルは、SF映画などでお目見えするだけで、パっとしないイメージがあったものの、本作ではまさにハマリ役。彼女自身の経験談なのではないかと思ってしまうほど、リアルに痛々しさを表現しています。そして、気難しい老年作家のドンを、警官や司令官などのイメージの強いハリスが、不器用ながら心の優しいミュージシャンを、『キュリアス・ジョージ』の声優を始め、「完全コメディー!」なイメージのファレルが演じているところが、なんとも味わい深いのです。

 また、娘のリーズに居心地の悪さを感じさせるシェリー役のワーナーは、お嬢様タイプながら、深い傷を隠して強気に振る舞う女性に適役。何だかちょっと地味な配役なのに、4 人の織り成すケミストリーは最高です。

 世間から傷つけられ、はじき出された弱者のようでありながら、実は誰よりも繊細で優しい心を持っている4 人の関係。いろいろな経験をして、いろいろな思いを抱く、大人の皆さんに観ていただきたい1 本です。