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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

World Trade Center

「あたり前のこと」は
何1つ存在しないから

ジャンル:ドラマ

オススメ度:★★★★

Rating: PG-13
出演 | ニコラス・ケイジ、マイケル・ピナ、マギー・ギレンホール、他
監督 | オリバー・ストーン

©2006 Paramount Pictures

(2006年9月1日号掲載)

ジャンル: 2001年9月11日、2機の旅客機が激突し、燃えさかる世界貿易センタービル。避難する人々を救助するため、自分の命を顧みずにビル内部に飛び込んだ港湾局警察官、ジョン・マクローリン(ケイジ)とウィル・ヒメノ(ピナ)は、轟音とともに崩れ落ちたビルの瓦礫に埋もれてしまう。奇跡的に生き残ったものの、身動きの取れない2人は、瓦礫の彼方に見える一筋の光に、生存への望みを捨てずに励ましあう。ジョンは長年連れ添った妻(マリア・ベロ)と子供たち、ウィルは妊娠中の妻(ギレンホール)と最愛の娘に、もう1度会うために…。

 あえて王道のハリウッド・エンターテインメントとしてヒーロー像に焦点を合わせるストーン監督のアプローチは、どの建物にも突撃することなく墜落したユナイテッド93便をテーマに、無名の俳優を配し、ドキュメンタリータッチで淡々と事実を追っていく『United 93』とは正反対。「まだ5年しか経っていず、傷もいえないうちに公開するのは、時期尚早なのでは?」という議論には、「観たくない人は観ない方がいい」とケイジ、「ハッピーエンドだから」と製作陣。遺族にとっては、10年経っても30年経っても、目をそらさずに観ることは不可能だと思います。でも、報道でしか知ることのなかった私たちには、自分の命を顧みずにビルに飛び込んだ人々、2次災害を恐れずに瓦礫の山を捜索し続けた人々、他州から被害地へ救助に向かった人々の姿を見て感じることは多いはず。登場人物の多くは実名で、ジョンの救助に携わった消防士のスコット・フォックスは、自らの役を演じています。

救助に向かう人々の勇気とその生還を待ち続ける家族
 テロの犠牲者とその家族、NYで生々しい空気と匂いに包まれた人、海の向こうでテロの成功を喜んだ人。あの日以降、象徴的な言葉となった「ワールドトレードセンター」という響きに含まれるドラマは、あまりにも多種多様です。米国が真珠湾攻撃の、日本が原爆の映画を作り続けるように、米国はこれからも、911の作品を作り続けていくでしょう。でも、「このテロを起こした背景に潜むものは何なのか?」と問いかけ、映画製作などできないような反対側の国の立場に立った作品ができて、初めて、「ワールドトレードセンター」は完成に近づくと思います。

 本作では、救助に向かった人々の姿に見る勇気と同じくらい大きなメッセージが、生還を待ち続ける家族の姿から伝わってきます。この世に、あたり前のことは何1つ存在しないということ。「最後に夫にかけた言葉すら思い出すことができない」と呆然とする妻と、「『自分の作ったご飯を食べなかった』ことを叱ったのが、息子への最後の言葉だった」と悔やむ母。いつでも、この一瞬がかけがえのないものであることを忘れずに、「ありがとう」や「ごめんなさい」、「I Love You」は、すぐに伝えるようにしたいな、と受け取りました。