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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

Letters from Iwo Jima

戦争で命を落とした人々へ、両国から捧げるトリビュート

ジャンル:ドラマ

オススメ度:★★★★★

Rating : NR
◎出演|渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、他
◎監督|クリント・イーストウッド

©2006 Warner Bros. Pictures

(2006年12月16日号掲載)

ジャンル: 1945年、米軍の上陸とともに始まった硫黄島をめぐる攻防戦。米軍の圧倒的な戦力の前に、5日もあれば終わるとされた戦いを、36日間にも及ぶ持久戦へと変貌させたのは、伝説の指揮官・栗林忠道(渡辺)と彼が率いた2万余りの兵。米国留学経験を持ち、家族想いの愛情の深さと大らかな性格を持つ栗林に、妊娠中の妻を残して出征したパン屋出身の西郷(二宮)、ロサンゼルス・オリンピックの馬術競技金メダリストであるバロン西(伊原)らが、祖国を想い、家族に宛てた数百通もの手紙に託された想いとは?

 巨匠イーストウッド監督が、61年前の硫黄島の決戦を日米両側の視点から描いた2部作の第2弾。先に公開された『Flags of Our Fathers』は、「米国から見た硫黄島」。硫黄島で星条旗を掲げる有名な写真に写り、生還した3人の米国兵士たちが、人々の愛国心を高め、戦時公債資金を集める宣伝活動に使われることによって傷つく心の葛藤を描いています。

 この2部作を、「勝ち負けを描いたものではなく、戦争で命を落とした人々に対するトリビュート」と語り、当時の若い日本兵たちの生き様をテーマに据えたイーストウッド監督とともに、「日本から見た硫黄島」を贈り出すのは、ハリウッド映画界を代表するそうそうたるメンバー。総指揮と原案を担当するのは、『Million Dollar Baby』(2004)、『Crash』(2005)と、アカデミー作品賞受賞作に2年連続で脚本を提供しているポール・ハギス。ハギスのもとで脚本を書き上げるのは、本作が映画脚本デビューとなる日系2世のアイリス・ヤマシタ。また、監督の趣旨に賛同したスティーブン・スピルバーグがプロデューサーに名を連ね、日本を代表する俳優陣が熱演を見せています。

今後の海外進出が楽しみな
実力派の日本人俳優陣


 「俳優として培った全精力を傾けないとできない仕事だった」とは、主役の栗林を演じる渡辺の言葉。「政治的にも社会的にも影響力のある話で、ひとつ間違えると単なる愛国映画になってしまう。いろいろな意味で慎重かつ大胆にしなければいけないと、イーストウッド監督とディスカッションをしながら進めた」と、名実ともに国際的俳優となった貫禄を見せてくれます。そんな渡辺に続くのは、ジャニーズ事務所の人気グループ・嵐のメンバーである二宮、日本の映画やドラマ、舞台で熱い活躍を見せる伊原のほか、加藤亮、中村獅堂、裕木奈江と、今後の海外進出が楽しみな実力派俳優たちです。

 勝ち負けや目に見える犠牲者の数など、「起きた事実」はひとつでも、その真実は見る側の立場や感情、情報力によって変わるもの。それが、善悪の線引きをした「歴史的真相」として各国で語り継がれることに恐怖を感じます。ハリウッド映画界を代表する名監督が、76歳の体からほとばしるエネルギーで築いた「360度」の視点は、硫黄島の決戦に関わらず、場所や国、戦いの形が違っても同じ、世界平和に向けた唯一の方法なのかもしれません。