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今週のオススメシネマ

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

Pan's Labyrinth

少女が誘うラビリンスは
大人に突き刺さるメッセージ

ジャンル:SF

オススメ度:★★★★★

Rating : R
◎主演 | マリベル・ベルドゥ、イヴァナ・バケーロ、セルジ・ロペス 供他
◎監督 | ギレルモ・デル・トロ

©2006 Picturehouse

(2007年1月16日号掲載)

ジャンル: 舞台は1944年、絶頂期を迎えるファシズムに抑圧された内戦直後のスペイン。聡明で夢見がちな少女・オフェリア(バケーロ)は、大好きな本をたくさん抱え、妊娠中の母・カルメン(アリアドナ・ジル)とともに、義父となる将軍・ヴィダル(ロペス)のもとへと馬車で揺られていく。そこで待っていたのは、自分の跡継ぎとなる赤ん坊と反乱軍を抹殺することだけに執着し、オフェリアや母、その他の命を何とも思わない非情なヴィダルと不気味な屋敷であった。

 身体を弱らせていく母と、残酷な独裁を繰り広げる義父の前で、完全に無力なオフェリアは、淋しさと不安のあまり、本で学んだフェアリーテイルから、自分だけの世界を創り出すことに。森の奥にあるラビリンスで出会ったちょっと不気味な森の妖精は、月の姫であるオフェリアとの再会を喜び、いくつかの課題を与える。その課題を解いていけば、やがて善は悪から救われ、美しい母は助かり、大好きな本当の父に会えるはず−。小さな身体から搾り出す精一杯の勇気と、自分が信じる正義に向かって危険を冒すオフェリアは、安らぎと幸せを手に入れることができるのか?

無垢な少女の純粋な瞳に
胸を締め付けられるよう…

 ふぅ。何とも衝撃的なSFファンタジーです。スペイン、アメリカ、メキシコ合作の本作は、ヨーロッパ各地を始め、世界中の映画賞を席巻。メキシコ出身のデル・トロ監督は製作意図について、「当時のメキシコは、スペイン内戦から逃れてきた国外追放者たちを寛容に受け入れた。スペインを脱出した時に子供だった彼らが、今のメキシコ文化やシネマを形成したと言っても過言ではなく、僕の成長にも大きな影響を及ぼしたんだよ」と語っています。

 夢と現実を行き来するオフェリアに抜擢されたのは、何作かのスペイン映画で小さな役を演じていた11歳のバケーロ。あまりの残酷さに、完成した映画を全編観ることは(倫理上は)できないであろう年齢ながら、純粋な黒い瞳に大人の性(さが)を映し出す様は、胸を締め付けるほど。無力が故に、ファンタジーの中に逃げ込むしかない世界中の子供たちの声を代表しているようです。

 戦争や独裁の歴史に横たわる血生臭い人間模様を、幼い少女が創り出すファンタジーを通して描く手法といい、観終わった後に残る何ともいえない空しさとノスタルジーといい、日本の宮崎駿監督の描く作品に通じるものがある気がします。おとぎ話好きな少女が森の妖精と出会い…という典型的なSFファンタジーでありながら、R指定も納得の、大人への悲しく重いメッセージ。肉体的にも精神的にも残虐な場面が多いので、覚悟して観てください。