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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

Alpha Dog

何気ない誘拐と小さな人質に
人生を棒に振る泥沼劇

ジャンル:ドラマ

オススメ度:★★★★

Rating : R
◎主演 | ジャスティン・ティンバーレイク、エミール・ハーシュ
    ブルース・ウィリス、他
◎監督 | ニック・カサヴィテス

©2007 Universal Pictures

(2007年2月1日号掲載)

ジャンル: 氏名:ジョニー・トゥルーラブ。出身:LAの豊かな家庭。個人財産:持ち家1軒&車数台。職業:麻薬売買。趣味:パーティー&アルコール&ドラッグ。年齢:19歳。これが本作の「アルファ・ドッグ(群れのリーダー)」のプロフィール。

 ある日、ドラッグ仲間の1人、ジェイク(ベン・フォスター)が麻薬の借金を踏み倒そうとしたことに腹を立てたジョニー(ハーシュ)は、借金の人質として、ジェイクの15歳の弟・ザック(アントン・イェルチン)を誘拐する。過保護な両親のもとで鬱憤をためていた成長期&反抗期のザックは、何度も逃げるチャンスがありながら、逆にジョニーとその悪友たちとのパーティーを楽しみ、新しい快楽の世界を知っていく。一方のジョニーは、弁護士との会話により、何気ない誘拐劇がとんでもない重罪となることを知り…。

 実際に起きた殺人事件をもとに、容疑者の名前と設定をアレンジして構成された本作。容疑者の弁護士が「公平な裁判の妨げになる」と公開延期を働きかけた後、映画を観た連邦判事により、公開差し止め要求が却下され、公開されることに。俳優たちの素晴らしい演技に、これがフィクションだったら「うまい映画」となるところですが、実話だと知っているから、空しさが残るばかり。

自分を抑止する力が鈍る…
その結果が引き起こした悲劇

 登場人物の多くは正義感がないわけでも、極悪非道なわけでもありません。友達を大切にする心も、人の話に耳を傾ける力もある人たち。足りないのは、ちょっとした忍耐と正義を貫く勇気、自分の行動に責任を持って、罪を償う潔さ。そして、想像力の欠如。ほとばしる感情でとんでもない行動を起こしそうになった時、その先に待っている地獄を想像して、自分を抑止する力がどうして働かなかったのかと、やるせないキモチになります。その判断力と想像力の鈍さが、ドラッグやアルコールによるものだとしたら、それはさらにやるせないもの。

 冒頭のインタビュー場面で、ウィリス演じる父が、「これは麻薬売買の問題ではなくて、親の教育の問題だ」と乱暴に答えるシーンがあります。「若者がなぜ、ドラッグやアルコールに走らなければならなかったのか」との問いが、「家族関係や教育の問題」とまったくつながらないとは言えないけれど、イコールではないはず。その過程には、たくさんのチャンスと選択肢があるはずだし、どのような状況でも、その人なりに立派に生きている人もたくさんいるのだから。

 子供の命を何とも思っていないわけではなく、涙を流しながら、心を痛めながら計画を進め、最終的には死刑や終身刑になる自分の行く末が怖い、ただそれだけで、目の前で「生きたい」と懇願する幼い命を絶つ。誰にでもどこにでも起こりうる脅迫的心理状態かもしれないけれど、それは、誰がどこで遂行したとしても、絶対に許される行為ではないと思います。