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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

The Matador

殺し屋とセールスマン
一致したのは利害? それとも友情?

ジャンル:コメディー

オススメ度:☆☆☆☆

Rating:R
出演:ピアース・ブロスナン、グレッグ・キニア、ホープ・デイビス、他
監督:リチャード・シェパード

©2006 Weinstein Company

(2006年1月16日号掲載)

ジャンル: 夜のメキシコシティー。あるホテルのバーで殺し屋、ジュリアン・ノーブル(ブロスナン)と普通のセールスマン、ダニー・ライト(キニア)は、行きずりのようで運命的な出会いをする。世界中で暗殺をしまくるジュリアンは、血も涙もないように見えて、実は毎晩悪夢にうなされる日々の中、孤独でたまらない。一方のダニーは、デンバーで愛妻のビーン(デイビス)と幸せに暮らしながらも、交通事故で失った息子への想いと借金に悩まされている。

 人生のどん底にいる男2人は、ほろ酔い気分も手伝い、誰にも打ち明けることのない悩みを少しずつ共有し始める。家から離れた場所で、もう2度と会うことのないであろう他人だからこそ、ポロポロと口をついて出てくる悩み。しかし、この一夜の出会いが、まったく異なる人生を歩んできた、そして歩んでいくはずだった2人を強く深く結びつけ・・・。

 監督は「(この作品が)ハリウッドで製作されることなど、まったく想像もしなかった」と話すシェパード氏。そのため、あり得ないほど弾けた性格の殺し屋・ジュリアンを描いた脚本サンプルを、ブロスナンに送ってみたところ、自ら製作と出演を申し出てきたとか。まさにインディペンデント映画界のシンデレラストーリーですね。

不思議な人間関係が始まる「ホテルのバー」

 こうして製作&主役を務めることとなったブロスナンも負けちゃいません。大作でしっかり大金を稼ぎ出す一方、ギャラ度外視で本当に自分が演じたい役を選んで、役者魂のバランスを取るのがセレブのスタイル。とすれば、007のジェームズ・ボンドとして渋く決めるブロスナンが自ら進み出た役こそが、このハチャメチャな殺し屋でしょう。

 裸にコスプレに、情けないやら可笑しいやらの涙。大物俳優の素顔に少しでも近づいたような気分で、大作には見られない醍醐味を味わうことができます。対するキニアも、堅実で真面目なセールスマン役を好演。「いつ殺されるか?」と警戒心に引きつった笑顔から、徐々にジュリアンを心配し始める真摯な表情への移り変わりは、なんとも絶妙です。

 この映画の鍵を握るのが「ホテルのバー」。誰もが仕事やレジャーを終えて時間つぶしに立ち寄る場所。暗めの照明にほろ酔い気分、部屋に帰ればすぐ眠れるし、同じバーで飲んでいる人とは、2度と会うことはまずない。そんななんとも言えない安心感から、自然と本音が出る場所。そこで始まる人間関係を描いてみたかったというシェパード監督ですが、思えばソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』を始め、多くの映画でホテルのバーって不思議な人間関係の始まりになっていますよね。出張先や旅先で、そんな思い出ありませんか?

 誰もがちょっとずつ共感してしまう大人の、それでいて最も純粋な人間関係をコメディータッチで描き出した友情物語は、軽く笑って軽く泣いて、軽く温まりたい人におすすめです。