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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

Into the Wild

マテリアリズムから荒野へ
青年の心の軌跡

ジャンル:ドラマ

オススメ度:★★★★★

Rating : R
◎主演 | エミール・ハーシュマン、マーシャ・ゲイ・ハーデン
    ウェリアム・ハート、他
◎監督 | ショーン・ペン

©2007 Paramount Vantage

(2007年10月1日号掲載)

ジャンル: 実話に基づいた映画は、人を引き込みやすい。ドラマチックな出来事が起きるたびに、「こんな体験をしたなんて」と、実在の人物を重ねて観るから。凄まじいクリストファー・マッキャンドレスの人生と、素晴らしいジョン・クラワカーの原作。でも、ショーン・ペンが再生させ、ハーシュが息を吹き込んだ映画は、それだけで力強く、完全に1本立ちしている。

 1992年、エリート大学を首席で卒業したクリス(ハーシュ)は、2万4000ドルの貯金全額をチャリティーに贈り、アイデンティティーを消し、バックパックを背負って家を飛び出した。ヒッチハイクでアメリカを横断、徒歩でアラスカの荒野へと分け入り、1人自然と向き合いながら、4カ月後に餓死した姿で発見されるクリス。恵まれた境遇のすべてを捨て、荒野へ向かった青年の心には何が起きていたのか? そして、最後に見えたものは?

 「脚本の第1稿は、たった25日で仕上げたんだ。原作は10年前に2回読んだだけ。第1稿が完成した後に、初めて原作を読み返したけれど、変更するところは少ししかなかった」と語るペン監督。このカリスマ俳優がクリスの心の軌跡から受けた衝撃がうかがえる。俳優出身の監督らしく、演技に対するディレクションは最小限に抑え、各俳優に自由な演技を任せたとか。

クリスはフレッシュで儚く
エネルギッシュで繊細

 「自分が感じるままに演技をさせてもらえて、とても甘やかされたと感じたよ」とは、荒野をエネルギッシュに飛び回ったハーシュ。「初めて原作を読んだ9歳の頃、アラスカの大自然の中、たった1人で生きるクリスに衝撃を受けた。僕は明かりを消して寝ることすら怖くてできなかったからね」とも語っている。

 そんなハーシュ演じるクリスに恋しない人はいないだろう。『Motorcycle Diaries』のガエル・ガルシア・ベルナルのようにフレッシュながら儚く、『Titanic』のレオナルド・ディカプリオのように、エネルギッシュながら繊細で痛々しい。旅の過程で出会う人々は、誰もがクリスに魅了されていく。

 仲間たちと米作りをしながら豪快に自然を生きるウェイン(ヴィンス・ヴォーン)や、過去の傷を引きずりながらヒッピー生活を続けるジャン(キャサリン・キーナー)、心の内を弾き語りに綴る16歳の少女(クリスティン・スチュワート)、人間関係の大切さを教えてくれる退役軍人のロン(ハル・ホルブルック)。人間味溢れる登場人物たちに共感し、彼らの目を通して見るクリスに、また恋する。

 ペン監督と10年来の友人だと言うエディ・ヴェダーの音楽も、スクリーンの雄大な自然と相まって絶妙な感情を引き出してくる。クリスが旅した理由、野生に学んだこと、出会った人々、最後に綴った言葉。それを知るためだけに、140分の長い旅に同行する価値はあるだろう。