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今週のオススメシネマ

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

The Darjeeling Limtied

やっぱり変だけど癖になる
甘く切ないウェス・ワールド

ジャンル:コメディー

オススメ度:★★★★★

Rating : R
◎主演 | オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ
    ジェイソン・シュワルツマン
◎監督 | ウェス・アンダーソン

©2007 Fox Searchlight Pictures

(2007年11月1日号掲載)

ジャンル: 「誕生日プレゼントに何が欲しい?」と聞かれたら、ウェス・アンダーソンの映画DVDフルセットか、一緒に2時間、お茶できる券をリクエストしたい。きっとナタリー・ポートマンも同じ気持ちで、たった10秒、1シーンだけの出演を熱望したのだろう。
 
 彼女は女優で、私はライター。だからアンダーソン監督への恋心をレビューで表すしかないのだけれど、彼の映画をレビューすることは難しい。ノスタルジックな音楽のような、奥深い絵本のような、オフブロードウェイの舞台のような、何とも言えない感覚をくれるから。でも、やっぱり最終的なステータスは「変なアメリカンコメディー」に他ならない。

 舞台はインドの秘境を走る列車。主役は父の死と母の失踪がきっかけで心が離れてしまった3兄弟。目的は兄弟の絆を取り戻し、自分たちの人生を見つめ直すこと。これだけ聞くと真面目なロードムービーのようだけれど、登場人物はアンダーソン映画にお馴染みの仲間たち。兄弟を仕切ろうとする寒い長男(ウィルソン)と、そんな兄にも結婚にも冷めた次男(ブロディ)、両方にいい顔をする気弱な3男(シュワルツマン)。誰も普通の大人ではない。

英国俳優風の外見から
突拍子もないアイデアが


 「普通じゃない大人の扱いならお任せ!」のアンダーソン監督は、本作でもすべてにおいて完璧なチョイスを披露する。好奇心をくすぐるタイトルに、「お〜、シャンゼリゼ♪」の楽曲セレクション、被写体を真横から撮影するアングル遊び、インドなのにスーツで決めるコスチューム。何より、それらひとつひとつをアンダーソン流に合わせて用意するクルーのチョイスが素晴らしい。ブロディをコメディーに抜擢した目もさすがだし、母親役のアンジェリカ・ヒューストン、友情出演のビル・マーレイなどの常連組もまたまた輝いている。

 主役のウィルソンとはテキサス大学時代からの映画仲間であるアンダーソン。スタンドカラーのコートがよく似合う長身&イケメン英国俳優風の外見でありながら、頭の中では突拍子もないアイデアが踊り狂っているのだろう。日常に溢れる何気ない出来事や、その辺で飛び交っている普通の会話の中に潜む面白さを、確実にピックしてスクリーンに映し出す。その鋭いセンスが、あまりにもマニアック過ぎて、たまによくわからない作品に仕上がってしまうこともあるけれど、それもまた別の機会に観直すと、理解できたりする。

 アブノーマルな人も、引きこもりがちな人も、怒りっぽい人も、細かい人も、誰もがチャーミングに思えて、あたたかい気分でエンドロールを迎えられる。そんなスウィートな映画って、あるようでなかなかない。このダージリンを美味しくいただけた人は、アンダーソンと仲間たちが贈る傑作集『The Royal Tenenbaums』や『The Life Aquatic with Steve Zissou』『Rushmore』もお試しを。