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ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

4 Months, 3 Weeks and 2 Days

違法中絶に奔走する女子
それはまるで私たちの日常

ジャンル:ドラマ

オススメ度:★★★★

Rating : R
◎主演 | アナマリア・マリンカ、ヴラド・イヴァノフ、
    ローラ・ヴァシリウ、他
◎監督 | クリスチャン・ムンギウ

©2008 Focus Features All Rights Reserved.

(2008年1月16日号掲載)

ジャンル: 舞台は、共産主義体制が終わりを告げようとしているルーマニア。カメラは大学女子寮の日常の朝を映し出す。暗く狭い廊下と剥き出しのシャワールーム、散らかった部屋、歯に衣着せぬ会話、メークに夢中な女子たち。やがて、どこかナーバスで優柔不断なガビータ(ヴァシリウ)と、何かの目的に向かってテキパキ動き回るオティリア(マリンカ)に焦点が絞られていく。

 ルームメイト同士であるこの2人。オティリアは、妊娠してしまったガビータの違法中絶を助けるため、安宿を借り、ミスター・ベベ(イヴァノフ)と呼ばれる男に中絶を依頼する手筈を整えていた。しかし、いざ3人が面会すると、ベベはお金の代わりに別の形での「支払い」を要求するのだった。究極の選択に迫られる2人は…。

 2007年カンヌ映画祭で、最優秀作品の称号であるパルムドールを受賞した本作は、映画を通してルーマニアの共産主義時代の実態をあぶり出すプロジェクトシリーズ『Tales from the Golden Age』の第1弾。体制への直接的な批判などは一切ない代わりに、限られたチョイスの中で最善を尽くそうと葛藤する人々の姿を通して、その時代特有のムードを映し出していく。

サプライズもBGMも
正しい決断もない日常映画


 それにしても、この映画には驚くほどサプライズがない。普通ならば何か起こりそうな暗闇や不穏な沈黙、思わせぶりな表情…が次々と映し出されるのに、特にドラマチックな展開もない。だからこそ、「これって意味あるの?」と思わせる会話や食事のシーンが延々と続いたりする。気づいてみれば音楽もない。その代わり、足音やため息、包む音、落とす音、落ちる音…が、ドキっとするほど鮮明に響いてくる。

 2人の女子も冴えない。自分では何も決断できず、助けられている方なのに、最後に1本しか残っていないタバコを自分が吸ったりして、自分勝手なガビータ。大体、妊娠しているのに何で喫煙を? 友達のことなのに、自分の恋、彼、身体、心までも犠牲にして危険を冒すオティリア。見つかったら刑務所行きだよ? その場しのぎの嘘をついたり、ツメが甘かったり、1つ1つの選択が間違っていることにイライラ。普通の映画だったら、もっとスムーズに事が運ぶはずなのに…。

 サプライズもBGMも正しい決断もないこの映画。どこかで見たことあるなと思ったら、「日常」だった。「共産主義体制下での違法中絶」とまではいかなくても、女同士の日常には、いつの時代も大小さまざまな事件が起きていて、私たちはいつも正しい決断をしているわけじゃない。客観的に見れば、もっといい選択があるだろうに、その瞬間を乗り越えるのに必死で、泥沼にはまってしまうことも。それでも助け合いながら、何とか一生懸命生きている。イライラしながらも、そんな2人に共感している自分がいた。