遊ぶ
Leisure

今週のオススメシネマ

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

Memoirs of A Geisha

運命に立ち向かう強さと
決して曇らない美しさ

ジャンル:ドラマ

オススメ度:☆☆☆☆☆

Rating:PG-13
○出演:チャン・ツィイー、渡辺謙、コン・リー、他
○監督:ロブ・マーシャル

©2005 Columbia Pictures

(2006年12月16日号掲載)

ジャンル: 時は1929年、小さな漁村から京都・祇園の芸者宿に連れられた、貧しい9歳の少女・チヨ(大後寿々花)は、女主人(桃井かおり)やチヨのみずみずしい美しさに嫉妬する意地悪な芸者の初桃(リー)から冷たい仕打ちを受ける。ある日、初桃のライバルである豆葉(ミッシェル・ヨー)の手ほどきを受けることになったチヨは、さゆり(ツィイー)という名を授かり、芸者として生きるための芸術的、社交的な技術を磨き始める。

 聡明でピュアながら魅惑的な瞳を持つさゆりは、花街一の芸者となるが、そんなさゆりを支えたのは、幼い頃に「こんな美しい日に、悲しい顔は似合わない」と声をかけた紳士的な会長(渡辺)にもう1度会いたい想いであった。やがて第2次世界大戦が日本を襲い、芸者の世界はすっかり姿かたちを変えていく…。

ハリウッドと日本映画の良いところを融合

 日本の伝統的な芸者を演ずる役に、ツィイーやリー、ヨーといった日本人でないアジアの女優を起用することへの物議。カリフォルニアにセットを作って京都のシーンを撮影していることなどから生じる不正確な描写への懸念。映画化を熱望したスティーブン・スピルバーグが、閉ざされた芸者の世界が故に製作を断念した経緯。外国人の目から見た芸者を綴ったアーサー・ゴールデンのベストセラー本『Memoirs of A Geisha』が名作であったために、愛読者が満足できないのでは、という心配。そもそも日本人同士の設定なのに吹き替えではなく、全員が英語を話していることへの違和感。そんな数々の予想や心配を見事に吹き飛ばし、すべてを美しく機能させたマーシャル監督の手腕には頭が下がります。

 芸者文化に深く触れたことのない私には、本作に描かれる芸者像がすべて真実なのか判断することはできません。それでも、マーシャル監督が言うように「芸者を忠実に描くことより、エンターテインメントとしての映画を成功させること」によって、結果的に多くの人がこの映画を楽しみ、それが日本文化の美しさを伝え、「芸者」への少しでも正しい理解につながれば、誰もがなし得なかった大きな一歩と言えるのではないでしょうか?

 「観客を楽しませながら、心に響くメッセージを伝える」というハリウッド映画と日本映画のいいところ取りをしたような本作。『シカゴ』でアカデミー賞に輝いたマーシャル監督、長年夢を見て製作を実現させたスピルバーグに敬意を表します。

 そして大好きなアジアのビッグスターである3人組に負けずと劣らない我らが日本勢の渡辺謙、桃井かおり、役所広司、そして工藤夕貴の演技も素晴らしく、何とも誇らしい気持ちに! さゆりの強さと美しさは誰の心にも響くもの。できるだけ多くの人に観てほしい今年指折りの傑作です。