エンターテイメント

映画の穴

Bad Boyからクールな大人へ

Matt Dillon

セリフを忘れてしまった時が
1番オーガニックで
真実味のある魔法の瞬間だったりする

 マット・ディロンは高校生の時、見た目の良さからスカウトされ、そのまま映画デビューしたという幸運の持ち主。最初のブレイクとなった『The Outsiders』では、共演のトム・クルーズ、ロブ・ロウ、パトリック・スウェイジーらの中でもマット・ディロンはひと際光っていて、その頃ティーンエイジャーだった私のアイドルであった。

 Bad Boyというイメージが定着していたため、コメディー路線に行き始めた時は、「伸び悩んで足を踏み外したのか」と心配していたのだが(笑)。「コメディーは大好きだよ。とても体で表現するのが難しいし、消耗する。軽くて簡単なことのようなのに、フィジカルに難しいというところが面白いんだ」。

 私の一ファンとしての勝手な心配をよそに、昨年出演したアンサンブルドラマ『Crash』でアカデミー賞助演男優賞へのノミネートを果たし、同作品が作品賞を受賞。俳優としてはノリにノっている時期だ。今年は新作『You, Me and Dupree』と『Factotum』が公開になる。

 「(アカデミー賞ノミネート後)ひどい脚本が送られてくることが増えたよ(笑)。いや、そんなことはない。本当に良いことだ。今は本当に、これ以上の状況はないんじゃないか、と思うくらいだ。この新作はスタジオ製作のコメディーで、これまでの作品とのコントラストもいい。それに、この後公開される作品『Factotum』は、僕が今までに見たこともないようなタイプのコメディーだ。素晴らしい出来で、出演できたことをとてもうれしく思っているよ」。

 『You, Me...』は、新婚家庭に居候が入り込んで大迷惑する、というコメディー。こんなキャラクターについて心当たりは?「Dupreeには誰もが共感できると思う。僕も何人かのDupreeを知ってるしね。それに、彼自身は自分が騒ぎを巻き起こしてることに気がついていないんだ。僕だって気づかないうちにそういうことがあるかもしれない。例えば、家にいる時は大きな音で音楽を聴いているし、運転がひどいって言われたこともあるよ」。Dupree役のオーウェン・ウィルソンとは、アドリブを交えた演技で刺激になったようだ。

 「演技の勉強を始めたばかりの頃、先生に『いつも新鮮で自然体でいなさい』と言われたのを、オーウェンとの共演で思い出したよ。彼は自然な演技をするのが好きで、僕たちはアドリブもたくさん入れた。それが映画のマジックなんだ。間違ったり何かを忘れた時に、今のはひどかったなと思ったとしても、それが1番良かったりすることもある。セリフを忘れてしまった時が、1番オーガニックで真実味のある瞬間だったりする。だから、そういう魔法の瞬間を受け入れることを学んだよ」。

 俳優以外の方向性としては、以前、『City of Ghosts』で監督デビューを果たしたが、今また何本かの脚本を執筆していて、近い将来監督する意向もあるらしい。「脚本を書いていたんだが、『Factotum』の撮影に入るんで一旦止めた。そのまま『You, Me...』を撮って、すぐに賞シーズンで忙しくなったから、今、ようやく時間ができて、コメディーをやることも、とても楽しんでいるよ」。俳優として成熟した今、監督としての幅も広がって新しいものを生み出していってくれるに違いない。

【主なフィルモグラフィー】
Factotum(2006)
Crash(2005)
City of Ghosts(2002)
There's Something about Mary(1998)
To Die For(1995)
Drugstore Cowboy(1989)
The Outsiders(1983)

[ 文:いしばし ともこ ]
『You, Me and Dupree』
監督:アンソニー・ルッソ&
   ジョー・ルッソ
出演:オーウェン・ウィルソン
マット・ディロン、ケイト・ハドソン
PG-13・108分
公開日:公開中
©2006 Universal Pictures