エンターテイメント

映画の穴

遅咲きのアクションスター

Jason Statham

俳優は世界で1番楽しい仕事。
道で宝石を売ることに比べたら贅沢な仕事だ。

 見かけよりうんと若い1972年生まれ。それにしても俳優としてのデビューはかなり遅い26歳の時で、それまで演劇の経験もないどころか、盗品の宝石や偽物の香水を道端で売っていたというから、叩き上げの俳優が多いイギリス勢の中では、特に異色の存在だ。

 「ガイ・リッチー(監督)がいなければ、俺はいまだに宝石を売ってたろうね。高校を出てからずっとそんなことを続けていて、ある程度の歳になると、そろそろ自分の道が限られていることもわかってくる。ところが、突然誰かがドアをノックして、『映画に出たくないか?』って言ったんだぜ」。

 高飛び込みのイギリス代表選手として、ソウルオリンピックにも出場したほどのスポーツマン。その姿体を活かしてスポーツ選手専門のモデル事務所に所属し、ファッションモデルをしていたことが、映画出演のきっかけとなった。元オリンピック選手のモデルで実はバッタ物売り…、はっきり言ってメチャクチャなこのプロフィールが、デビュー作の『Lock, Stock, and Two Smoking Barrels』には、うってつけのイメージだったのだろう。突出したアクションスター不在の今のハリウッドにもすぐさま目をつけられ、イギリスとロサンゼルスを行き来する日々のようだ。

 「イギリスとここ(LA)の両方に住んでいるんだ。必死にロウソクを灯したいなら、ロンドンは素晴らしいところだ。向こうにいる時は、友達と会って飲んで、冗談を言いながら近況を話す。それはそれで楽しいが、俺にとっては生産性がまったくない。こっちにいるともっと健康的な生活が送れるよ」。

 ボクシングで鍛え、フットボールに興じ、サッカーチームに所属し、スノーボードを楽しみ、ビーチに通う。どちらかと言うと夜の顔の方が似合っているイメージだが、本人はカリフォルニアの自然を十分に満喫したアウトドア派だと豪語する。

 さらに不似合いなことに(?)、シンガーの父親の影響でドラム演奏もするのだという。

 「『Walk the Line』が、すっごく良くて、驚かされたね。ホアキンなんてまるで本物みたいだったじゃないか」。ミュージカル映画の話が来たら、喜んでやりたいという。こちらもぜひ観てみたい。

 新作の『Crank』では、ある薬物を注射されたため、アドレナリンを出し続けなければならない男の役を演じている。

 「これまでもRレートの映画に出て来たが、これは今まで見たこともないような脚本だった。タランティーノ作品をもっとどぎつくしたみたいなね」。

 タフな男の役を演じ続けていることに関して聞かれると、「バレリーナの役よりいいんじゃない?」とはぐらかしたり、ジェームス・ボンド役の候補に挙っていたことを聞かれると「くだらない質問ばかりするなよ」と機嫌を悪くする。イギリス人らしい辛辣な批判とジョークを交えたインタビュー。Fワードも連発だ。

 「俳優は世界で1番楽しい仕事だよ。道で宝石を売ることに比べたら贅沢な仕事だ」。

 粗野な態度の訳は、彼が俳優として成功し始めているからというわけではなく、あくまで彼の中では、今でも自分はちょっとラッキーなストリートボーイに過ぎないということか。

©2006 Lions Gate Films

【主なフィルモグラフィー】
『Revolver』 (2005)
『Transporter 2』 (2005)
『The Italian Job』 (2003)
『The Transporter』 (2002)
『Ghosts of Mars』 (2001)
『Snatch』 (2000)
『Lock, Stock and Two Smoking Barrels』 (1998)

[ 文:いしばし ともこ ]
Crank
監督:マーク・ネベルダイン&
ブライアン・テイラー
出演:ジェイソン・ステイサム
エイミー・スマート 他
R・87分
公開中
©2006 Lions Gate Films