エンターテイメント

映画の穴

ハードな人生のレッスンを経て、生まれ変わった

Mickey Rourke

「今までのオレは、まったく責任感がなかった。
能力があればなんでもありだと思っていたんだ」

 長いブランクを破ってハリウッドに返り咲いたミッキー・ロークは、見た目も中身もそれまでとは打って変わっていて、ファンを驚かせた。

 「(この数年間の自分の生活は)ひどく惨めなもんだったさ。いったんボクシングの世界に戻ったら、6、7年(俳優としての)仕事がまったくできなくなった。ようやくここ2年でまた仕事をもらえるようになったよ」。

 数年前、あるレストランで見かけたが、その時はすでに容貌も以前のようではなかったし、少し近寄り難さを感じた。今思えばあの頃が、彼が1番辛かった時期かもしれない。

 「ボクシングで金を使い果たしたんだ。4年前はほんとに一文無しだったよ。ワンベットルームのアパートに住んで、持っていた物はすべて売り払った。ラッキーなことに車とオートバイのコレクションを持っていたから、それを売って数年は食いつなげたよ。でも、食うために人に金も借りたし、建築現場での仕事でもしようかと思って知り合いに電話したこともある。相手にされなかったがね」。

 昔は俳優という仕事が大嫌いだったと言う。「だからいったん辞めたんだ。俳優業のせいにしたけど、それは自分自身の問題だった。オレ自身が幸せじゃなかったからな」。

 91年から95年までプロボクサーとして生活した。いったん原点でもあるボクシングの世界に戻ることで、自分自身を見直すことができたという。

 「3、4年したらまた俳優に戻れると思ったら、すっかりドアが閉ざされていたんだ。今、ゆっくり、だが確実に(ハリウッドに)受け入れられるようになってきている。今となっては、時間通りに来ることや、(撮影所の)トレーラーを壊したり、2日も遅れて50人ものバイク乗りたちと現れたりしちゃいけないということが、いかに重要かわかったよ。責任という言葉を知ったんだ。今までのオレはまったく責任感がなかった。能力があればなんでもありだと思ってたんだ」。

 ひと言で言えば、「大人になった」ということか。でも、甘いマスクにバッドボーイの性格だった10年前と、タフガイを全面に出している現在の表情に責任感のある態度とは、見た目と中身が反比例して変化した、ということなる。そんな自由気ままな彼を、ある大物ハリウッド女優は共演拒否したことも。そういった経験からか、彼は女優全般を毛嫌いしている。

 「そもそも女優というのが嫌いなんだが、キーラ(・ナイトリー)は好きだよ。あの子は品格があって頭もいいし、仕事熱心だ。歳のわりに大人だよ」。

 そのキーラと共演している新作『Domino』では、女性の賞金稼ぎとして有名になるドミノ・ハーヴェイの親分役を演じている。

 「賞金稼ぎはバイク乗りにとても似ている。ストリートで生きているやつらだからな」「この役は自分で選んだんじゃない。トニー(スコット監督)が電話をくれたんだ。オレは『Hunter』を見た時からトニーが好きだった。兄貴のリドリーと違って、トニーはActor's Director(役者の演技を中心に演出を組み立てる監督)さ」。

 普段の会話の中にもFワードがふんだんに使われるミッキー。辛い時期のことも包み隠さず話す彼は、いつも自分の欲望や夢に忠実に生きている。そんな彼の居場所がハリウッドにあって、本当によかった。

【主なフィルモグラフィー】
『Sin City 2』(2006)
『Sin City』(2005)
『Domino』(2005)
『Stormbreaker』(2005)
『Man on Fire』(2004)
『Once Upon A Time in Mexico』(2003)
『Get Carter』(2000)
『The Rainmaker』(1997)
『Johnny Handsome』(1989)
『Angel Heart』(1987)
『9 1/2 Weeks』(1986)

©2005 New Line Cinema

[ 文:いしばし ともこ ]