エンターテイメント

映画の穴

自分の居場所を見つけた不良少年

Mark Wahlberg

朝、目が覚めた時、人生がとても穏やかで、
こうあるべきなんだと感じるんだ

 『The Departed』を観た人は、みんなマーク・ウォルバーグのファンになったのではないかと思う。それくらい、この役をオリジナリティー溢れる魅力的な役に演じていた。この作品でゴールデングローブ賞、アカデミー賞へのノミネートを果たした昨年は、彼にとって転機となったことだろう。
 「そりゃ(賞を)獲りたかったよ。誰だって獲りたいよ。でもね、(ノミネートだって)すげぇことだよね。それにマーティ(マーティン・スコセッシ)が作品賞を獲った映画に出られたってことがすごいよ」。

 チャーミングな笑顔と鍛え上げられた体、そして不良っぽいイメージを「売り」にスターダムにのし上がってきた彼が、初めて俳優としての実力を認められたのだ。
 「父親も母親も泣いたよ。僕の稼ぎには興味を示さなかったのに、アカデミー賞となると、父親が子供の頃からずっと授賞式を楽しみに見てきたっていう話が止まらなくなった。『これでお前も本物の俳優として認められた』ってね」。

 ボストンで9人兄姉の末っ子として生まれ、11歳で両親が離婚してからは非行に走り、14歳で高校を中退。刑務所で暮らしていたこともある。すぐ上の兄ドリーと組んだバンドからは、そのバンドの「いい子」的なイメージが自分に合わず、脱退。ところが、バンドはNew Kids on the Blockとして世界中のアイドルとなる。ドリーはマークをミュージシャンとして売り出すために曲を提供し、マークは「マーキー・マーク」というラッパーとして人気を得る。そしてモデル、俳優業と、彼の世界はあっという間に大きく開けた。
 「悪い仲間たちとつるまなくてもこの世界で生きて行ける、という思いを持って刑務所から出てきた時、あの日が自分にとって大きかった」と言う彼は、不良少年だった自分の成功が、同じ様な少年たちに希望を与えられればと思っている。

 現在はガールフレンドとの間に2児をもうけ、親バカぶりを発揮しているようだ。
 「独身男用の家を建てたのに、おもちゃとチャイルド・プルーフの物で一杯になってしまったよ。ゴルフの練習用スペースも、もうすぐブランコに変えられてしまうんだ」。

 普段は常に家にいて、スーパーマーケットかゴルフ以外には外出さえしないらしい。
 「朝、目が覚めた時、人生がとても穏やかで、こうあるべきなんだと感じるんだ。昔は、『ああ、俺はいつか真っ当な暮らしができるのか? いつかガードを下げて、リラックスできる日が来るのか?』と考えたものだけどね」。

 子供ができてから、出演作品を選ぶのにも慎重になると言う。新作の『Shooter』はアメリカと世界の現状を反映している内容だけに、若者たちに対するメッセージ性も意識しているようだ。
 「この作品の良いところは、エンターテインメントでサスペンスに溢れるアクション映画でありながら、自分たちが常に正しいと思っているような若者に、世界で起こっていることに目を開かせ、興味を持たせることができるところだ」。

 自身の経験を元に製作するHBOの人気シリーズ『Entourage』など、俳優業だけでなくプロデューサー業でも手腕を発揮し始め、今、確実に黄金時代を生きているようだ。

©2007 Paramount Pictures

【主なフィルモグラフィー】
The Departed(2006)
Invincible(2006)
The Italian Job(2003)
Planet of the Apes(2001)
The Perfect Storm(2000)
Boogie Nights(1997)
The Basketball Diaries(1995)

[ 文:いしばし ともこ ]
『Shooter』
監督:アントワン・ファクア
出演:マーク・ウォルバーグ
   マイケル・ペニャ
   ダニー・グローバー
R 公開中
©2007 Paramount Pictures