エンターテイメント

映画の穴

映画ファンを魅了する映画マニア

Quentin Tarantino

ペンがアンテナになって、
登場人物たちが勝手に会話を始めるんだ

 1992年に『Reservoir Dogs』で鮮烈なデビューを飾り、続く『Pulp Fiction』で各賞ノミネートと受賞を果たしてスターとなって以来、映画ファンたちのカリスマ的監督として君臨しているクエンティン・タランティーノ。一種の天才には違いないが、その天才を作り上げた背景には、映画への無類の情熱がある。

 16歳で本格的に映画を製作するため、高校を中退。成功を手に入れた時には、ほぼ30歳になっていたが、彼の頭の中にはあまりにも引き出しが多いため、彼の撮る作品は、テーマ、ストーリー、台詞、そして撮影のテクニックに至るまで、過去の傑作から最高の部分を抽出して集めたような、隙のない完成度を持っている。

 『Reservoir Dogs』『Pulp Fiction』が公開された時、ギャング映画としての新しいスタイルが出てきたわけだが、他の人のスタイルを盗んだだけだ、という人もいた。でも、あれはむしろセルジオ・レオーネが『Fistful of Dollars』を作ってスパゲッティ・ウエスタンのジャンルをポピュラーにしたのと同じようなものだ。彼が新しいことを始めたわけでもないし、他にも素晴らしい監督はたくさんいる。

 「僕のあの2作品もギャング映画の新改革で、ああいう形でやったのは僕が最初だとは言えるだろうね」。

 世界中のあらゆる映画を見尽くした映画マニアである。自分の映画を語る場合も、映画史を交えた一般的映画論のように聞かせるのが面白い。日本映画では深作欣二監督やゴジラへの崇拝で知られている。彼の暴力的なスタイルの原点とも言えるのだろう。

 「いつも暴力的な映画にしようと意識しているわけではない。ただ、センセーショナルな暴力的要素を扱うことが多いのは、スリリングなシネマを撮ろうとすると、それが犯罪映画であろうが、カンフー映画であろうが、今回のようにスラッシャーやカーチェイスであろうが、自然と心臓が止まるような映像が増えていくからだ」。

 今回のスラッシャーやカーチェイスものとは、新作の『Grindhouse』のこと。前作の『Kill Bill』と同じ様に、まさに知識の宝庫である彼の映画観と、オリジナルのセンスが融合して昇華した傑作だ。弟のように可愛がっているロバート・ロドリゲス監督と共に、70年代によくあった、B級映画を2本立て上映する映画館
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 ロドリゲス監督のパートが『Planet of Terror』というスラッシャー・ゾンビ映画で、タランティーノ監督のパートが70年代の作品へのオマージュといった素晴らしいカーチェイス映画となっている。しかし、ただのアクション映画ではなく、主人公となる女性たちの会話がユニークである上に現実的でもある。

 「僕は脚本家だからね。脚本家は自分のことを書くという仕事ではなく、他人の人となりを見て、話し方や言い回しを研究するんだ。僕の頭はスポンジだよ。人が話していることをいつも聞いているし、特異な部分を見ている。面白いと思ったことはすべて覚えている。すると、半年後であろうが15年後であろうが、ある人物を描こうと思った時、ペンがアンテナのようになって、自分が台詞を書かなくても、登場人物たちが勝手に会話を始めるんだ」。
 なるほど、すべての謎はスポンジ頭にあるようだ。

【主なフィルモグラフィー】
Grindhouse(2007)
Kill Bill Vol. 2(2004)
Kill Bill Vol. 1(2003)
Jackie Brown(1997)
Pulp Fiction(1994)
Reservoir Dogs(1992)

[ 文:いしばし ともこ ]
Grindhouse
監督:クエンティン・タランティーノ
   ロバート・ロドリゲス
出演:カート・ラッセル
   ロザリオ・ドーソンゾーイ・ベル
   ローズ・マッゴーワン
   フレディ・ロドリゲス
Rated:R 上映時間:191分 公開中
©2007 Dimension Films