エンターテイメント

映画の穴

人生経験を積んで新しい魅力を放つ

Jake Gyllenhaal

「一瞬だけは、傷つきやすくて繊細になろうとした。
たった10分の1秒くらいしかできなかったけどね」

 2005年だけで(ナレーションも入れると)4本の出演作品が公開されたジェイク・ジレンハール。つい最近までは、いつもうつろな目をしていて、『The Day After Tomorrow』の時でも、「父親に守られる少年」という役が似合っていた。『Good Girl』でも、どちらかというと「優しいが頼りない」というイメージを持った若者だった。

 それが『Jarhead』の彼を見て、はっきり言ってド肝を抜かれた。肉体はたくましく鍛えられ、眼光は鋭く、圧倒的な存在感を持っている。そして、オスカー候補の最有力と目されている最新作『Brokeback Mountain』では、一歩間違えばキャリアを危機に晒しかねない難しい役−同性愛者の役に挑戦し、役者としての幅を広げている。

 「(最初に脚本を読んだ時)『あり得ない』という感じだった。18歳で関わりたいという作品ではないよ。5年後、もう1回脚本を読んで、アン(・リー監督)がやると知って、『これはやらなきゃ』と思ったんだ」。役に対するアプローチや監督とのコラボレーションの仕方は、明らかに変化しているようだ。

 「自分にできることすべてを役に出し切って、後でそのシーンを見てみると、『おっ、あんなにやったのにこんなに抑えられている』という感じだった。アンの監督としての仁愛はとても変わっていて、映画にも表れている。それが彼の作品のバランスの取り方なんだ」。

 映画監督の父と脚本家の母、俳優の姉、と映画一家に生まれ、子役として映画に出演し始めた。隠れた名作『October Sky』では、既に俳優としての才能を垣間見せていた。

 「僕はとても面白い少年時代を送ったから、その経験を生かすことで、このジャックという役と自分自身を平行に置くことができたんだ」。

 そして、実生活での恋愛と別れが皮肉にもこの難しい役への挑戦に力を貸してくれたようだ。姉のマギーに紹介されて付き合っていたキルスティン・ダンストとの恋愛だ。

 「とても大変だった。ちょうど別れる時に、山に3カ月も籠もらなくてはならなかった。周りに誰もいない状態だよ。この寂しさの中で、この2人の男(映画のキャラクター)は愛し合っていったのだな、と…」。

 しかし、頭では理解できても身体は別。実際にラブシーンを撮影する時は、こんな感じだったようだ。

 「2人とも、『用意はいいか?』『ああ』『じゃ、いくぞ』という感じで、1番の比喩は、多分、水を怖がっている子供が思い切ってボートから飛び込んだんだけど、必死にボートに戻って来ようとしている、というところかな。それにしても大変だった。自分の中にあった同性愛嫌悪を解き放たなければダメだと気がついて、勇気が出たよ。一瞬だけは、傷つきやすくて繊細になろうとした。たった10分の1秒くらいしかできなかったけどね」。

 結局ラブシーンは、13回も撮り直しになったとか。

 「この作品はただの友情の物語ではなくて、2人の人間が親密に、性的に、何年もの間つながっている様子を描いている。ヒースと僕は、たくさん話をしたし、彼は『僕の役は光に対して敏感で、お前の方は音に敏感なんじゃないか』と言っていたよ」。

 若手男優として頭角を表してきた彼の、今後の人間的成長と俳優としての活躍に大いに期待したい。

【主なフィルモグラフィー】
『Zodiac』(2006)
『Brokeback Mountain』(2005)
『Jarhead』(2005)
『Proof』(2005)
『The Day After Tomorrow』(2004)
『Good Girl』(2002)
『Donnie Darko』(2001)
『October Sky』(1999)

©2005 Focus Features

[ 文:いしばし ともこ ]