エンターテイメント

映画の穴

華やかで大らかな癒し系(?)女優

Queen Latifah

「自分が雑誌のモデルみたいじゃないことを
知ってるし自分らしくあればいいと思ってる」

 笑顔が素敵な女性と言えば、まずこの人の顔が浮かぶ。周囲の人を和ませてくれる、温かな人柄が感じられる笑顔である。ここ数年、クウィーン・ラティーファは、アフリカ系アメリカ人の女優としては1番、と言ってもいい活躍を見せている。彼女がかつてラッパーであったということも、人々は忘れつつあるのではないか。

 「8歳の頃から、すでに自分は“ラティーファ”として振る舞っていて、映画や音楽の世界に憧れていたの。私はジャクソンファミリーに生まれたわけではなかったし(笑)、すべてがファンタジーの世界だった。エルビスの映画やミュージカルも大好きだったわ」。

 1988年、18歳の時、ヒップホップ歌手としてデビューし、94年にはグラミー賞を受賞している。映画出演は91年からだが、徐々に本格的に女優という仕事にハマったようだ。

 「クウィーン・ラティーファとしてではなく、もっと演技をしたかったから、指導者について勉強したの。でも、もともとは歌手だから、その特性を映画の中でも活かせてると思うわ」。

 アカデミー賞助演女優賞やゴールデングローブ賞などにノミネートされた『Chicago』の役は、そんな彼女にうってつけだった。

 新作の『Last Holiday』は、余命いくばくもないと診断された女性が、人生の最後に贅沢な旅行をする、というテーマの作品。彼女にとって、この主人公と同じように、価値観の転換となった経験は、最愛の兄の死だったという。

 「私たちはいつも一緒にいろんなことをしていたし、一緒にオートバイにも乗っていたわ。それがある日突然、兄を亡くしてしまったの。初めて、自分たちにも死が訪れるということを知った。悲しみに暮れている間は、生きているというより、ただ存在しているだけという状態だったけれど、それを乗り越えた時、自分の人生を楽しめるようになったの。すべてに感謝し、花の匂いさえかぐことができるようになったの。それからは撮影の合間にも、靴下や靴を脱いで裸足で草の上を歩いたりするわ。心地良くなって、子供の頃みたいに何もかも忘れ、純真になるの」。

 愛する者の死を乗り越えて生への感謝を見出すーー簡単なようでなかなかできることではないが、きっと彼女は生来ポジティブな感性の人なのだろう。

 彼女自身の外見への考え方にも肯定的な面がうかがえる。

 「(自分が体重を落とすのは)決して他の人たちのためにやっているのではなく、自分の気分を良くするためにやってるの。だから、よく映画の出演依頼を断ったりをもするわ。『30日間で30ポンド落としてくれ』とか言うんだもの。私は自分が雑誌のモデルみたいじゃないことを知ってるし、自分らしくあればいいと思ってる」。

 数年前、バストを小さくするというなんともうらやましい手術を受けたが、これも見た目を気にしていたからいうより、運動をするにも胸が邪魔になってままならないという悩みを抱えていたからだそうだ。

 そんな我が道を歩む彼女は、06年1月4日、ハリウッドのWalk of Fameに星を刻んだ。これからの活躍をますます期待しつつ、いつも前向きなあの笑顔を、女性として、人間として、見習いたいと思う。

【主なフィルモグラフィー】
『Last Holiday』(2006)
『Beauty Shop』(2005)
『Taxi』(2005)
『Bringing Down the House』(2003)
『Chicago』(2002)
『The Bone Collector』(1999)
『Jungle Fever』(1991)

©:2006 Paramount Pictures

[ 文:いしばし ともこ ]