エンターテイメント

映画の穴

ハリウッド一の良い人キャラ

Matt Damon

友人に言わせると
僕は普段はとても闘争心がないんだよ

 いわゆる古風な二枚目という訳ではない。性格派とも言い難い。ハーバード大学に在籍していたと聞けば、その知性的な面は外見からも伺えるが、それ以外は特に痛烈にアピールされる個性を感じない。しかし、俳優としては一定のカテゴリーに収まり難いことが、逆に功を奏しているような、不思議な存在である。

 ハリウッド一の「良い人」と評されることもあり、大物プロデューサーのジェフリー・カッツェンバーグも、彼のナイスガイぶりには太鼓判を押していたが、なるほど彼の「良さ」は、実際に会ってみるとその物腰などから伝わってくる。

 「(他人から見る自分のイメージについて)自分でコントロールできるものではないから、時間を無駄にしないよう、深くは考えないことにしてるんだ。礼儀正しくあるようにしているし、たぶん、少し退屈(なイメージ)なんじゃないかな」。

 以前、映画『Team America: World Police』のなかで、自分の名前を間延びした声で繰り返す「Maaat Daaamon」というキャラクターで風刺されているが、それも爽やかに笑い飛ばす器量がある。

 「僕はちょっと頭が弱いと思われてるのかな? たぶんそうなんだろうね。あの映画のおかげで勉強になったよ。クリエーターたちは面白いし、すごく才能があると思うから、登場させてもらえてうれしいよ」。

 ティーンエイジャーの頃から演技に興味を持っていたが、親の希望もあり大学に進学。しかし、ハーバード大学を卒業間近で中退。

 「両親は、僕が俳優になりたがっていることを知っていたし、それは良かったんだが、活動資金は自分で稼がなければならなかった。ボストンでコマーシャルの仕事をして金を貯めては、その金でニューヨークへ行き、オーディションを受けていた。3年かかって19歳の時、初めてTVの仕事がもらえたんだ」。

 『Good Will Hunting』で一緒にアカデミー賞脚本賞を受賞した俳優のベン・アフレックとは、その頃からの親友である。それが2人共、同時期に父親になった。

 「娘たちが一緒に遊んでいるのを見るのは本当に素晴らしいよ。うちの娘はまだ自分がヴァイオレット(ベンの娘)と遊んでいるとは知らずに、髪の毛を引っ張ってるだけだけどね」。

 俳優としての転機となったジェイソン・ボーンのシリーズは3作目の今作『The Bourne Ultimatum』で完結となる。

 「この役を演じることが好きだった訳じゃない。いつも最後には笑ってしまうんだ。まったくばかばかしいからね。僕の友人に言わせると、僕は普段はとても闘争心がないんだよ」。

 正反対のキャラクターに溺れることなく冷静に見ているところが彼らしい。
 「この男が持っている葛藤が好きなんだ。衝動的に最悪の行動を取ってしまうが、本当はいいことをしようとしている。自分の中にその罪の意識を抱えていて、やってしまったことを償おうとする。この男のそういうところが好きだ。究極的にはこれは中年男の願望を叶える役だよ。頭を打って(倒れ)、気がつくと何カ国語も話せるようになっていて、ケンカが強く、女からモテモテ。自分がボートで目が覚めて、そんな風になっていたらいいよね」。

 飾らない本音の分析に、 ヒーロー映画ではないアクション映画を選んだ彼の、俳優としての生き方を見た気がする。

©2007 Universal Pictures

【主なフィルモグラフィー】
The Departed(2006)
The Bourne Supremacy(2004)
The Bourne Identity(2002 )
Ocean's Eleven(2001 )
Saving Private Ryan(1998 )
Good Will Hunting(1997 )

[ 文:いしばし ともこ ]
The Bourne Ultimatum
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン
   ジョアン・アレン
   デヴィッド・ストラザーン
   ジュリア・スタイルス
Rated:PG-13 上映時間:111分 公開中
©2007 Universal Pictures