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ゴルフ徒然草

ヒデ・スギヤマが、ゴルフに関する古今東西の話題を徒然なるままに書きまとめた、時にシリアスに、時にお笑い満載の、無責任かつ無秩序なゴルフエッセイ。

ヒデ・スギヤマ/平日はハリウッド映画業界を駆け回るビジネスマン、
週末はゴルフと執筆活動に励むゴルフライター。

ヒデ・スギヤマ

vol.1 マスターズの秘密

初回なのでご挨拶まで

 約25年にわたり、日本・アジア・欧州・北米と各地でゴルフをしてきました。次はすべてバンカーの火星でやりたいと思いますが、私が生きているうちは無理そうなので、せめてこれまでの経験とゴルフへの深い愛情を、せん越ながら活字にさせていただきます。トーナメントの横顔、日米ゴルフ文化の違いなどを検証しながら、LAで人気のゴルフサークルを紹介もしていきますので、幹事さんからの売り込みも募集しています。


マスターズ

 その長い歴史と際立った個性でメジャートーナメントのけん引役を務める「マスターズ」が、今年も期待を裏切らない華やかさと厳しさを披露して閉幕しました。自身2着目のグリーンジャケットを手に入れたフィル・ミケルソンは、PGA有数のカリスマ性を持つ天才レフティーとして、更なる成長が期待できるでしょう。

 さて、中島常幸プロが以前「例えるなら全米オープンは国立競技場だが、マスターズは国立劇場」という発言をされていましたが、確かに高速グリーンやアーメンコーナーに代表されるコース難度の高さもさることながら、マスターズには常に華やかで洗練された雰囲気に満ち溢れており、世界のトッププロにもあたかも役者のような振る舞いが望まれる唯一の大会ではないでしょうか。その背景には、あの伝説のゴルファー、ハンサムで秀才…そして誰よりも強かったボビー・ジョーンズの世界観が、時空を越えて現代にまで影響を及ぼしていることは言うまでもありません。

 マスターズの演出には幾つかの秘密があり、緻密に計算された仕掛けが随所に見られます。例えば「色」。マスターズは大会中、コース内で使用を許されている色は緑、白、そしてサブカラーの黄色だけなのです。例えば目土(ディボットに埋める肥料の入った砂)も緑色に染められているためにディボットが目立たず、フェアウエイは緑一色で非常に美しい姿を保っています。またバンカーの砂はテレビで最も白く映る砂を入れてあり、キャディーは背中に緑の文字で選手名が入った白いツナギでバッグを担ぐのです。

 ただし、その色のルールを無視していい対象が3つだけあります。1つ目はもちろん主役である選手、2つ目はこの大会では“パトロン”と呼ばれるギャラリー、そして3つ目は早春のこの時期、オーガスタに美しく咲く“花”。この3つがマスターズという舞台の主役達です。

 “世界から選ばれたマスター”としての誇りを胸に登場するプレイヤーたち、他のトーナメントでは見られない程の辛辣な批評と、好プレーには最大の賛辞を選手に与えることで有名なパトロンたち、どのようなドラマが起ころうとも、常に優しく微笑んでいるかのように可憐に咲く花たち…。このトーナメントが他と何よりも違う点、そしてボビー・ジョーンズが愛したマスターズの世界観、それはゴルフトーナメントに不可欠な3つの要素、「選手・ファン・美しい自然」が最も目立つように計算された最も格式の高いゴルフ劇場であり、その時代に最も強いプレイヤーがプライドをかけて演じる、最も感動的なゴルフ・アスリートの競技場なのです。