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ゴルフ徒然草

ヒデ・スギヤマが、ゴルフに関する古今東西の話題を徒然なるままに書きまとめた、時にシリアスに、時にお笑い満載の、無責任かつ無秩序なゴルフエッセイ。

ヒデ・スギヤマ/平日はハリウッド映画業界を駆け回るビジネスマン、
週末はゴルフと執筆活動に励むゴルフライター。

ヒデ・スギヤマ

vol.15 6インチ VS ムリガン

秋真っ盛りの日本にいます。
そして今日は久し振りに日本のゴルフコースでプレーしました。
大手ゴルフメーカーM社のスポンサーにより、
たまたま近所のゴルフ場でアマチュア対象のオープン・トーナメントが開催されており、
飛び入りで参加してみたのです。

私事で恐縮ですが、当コラムと併記されている『ゴルフ南可Aコース・辛口スコアカード』では、
LAのパブリックコースを独断と偏見で採点するという連載を続けています。
その中でいつも評価に悩む点は、フェアウエイとグリーンのコンディションです。
自然の中で、そして自然を相手に闘うゴルフの舞台は、
当然ながらテニスコートのようにきれいに整備されているわけではありません。
ある程度の荒廃こそが自然であり、文字通り“ラフ”です。
しかしプレーそのものに影響を与える劣悪なコンディションは、
ゴルフの面白さを半減させる場合も有り、なかなか難しいテーマであります。
意図的にラフまで手が加えられた米国の華やかなトーナメントコースもゴルフなら、
風や雨こそがグリーンキーパーであるような荒々しい錯覚を覚えさせる、
長い歴史が造り上げたイングランドやアイルランドのリンクスもゴルフなのです。


さて本題に戻りますが、私はその某ゴルフ場の1番ホールで、
美しい山の景色に見とれながら打順を待っておりました。
するとおもむろにキャディが、同組の全員に「今日は6インチでーす」と明るく伝えたのです。
いつものことのように頷いて納得する他の3人。
『6インチ…ですと?』私は少し驚きました。
それは当然、“スルー・ザ・グリーンにおいて6インチ・リプレース可能”
というローカル・ルールまたは、当トーナメントだけの特別ルールを意味しているわけです。
『ふーん、この季節(日本の秋は通常コンディションがベスト)でも
フェアウエイが荒れているのか…』
と少しがっかりしました。
しかし実際にコースに出てみると、素晴らしいコンディションなのです。
フェアウエイは人工芝と見間違えるほどの美しい緑が、
全く隙間無く広がり、グリーンもよく引き締まっています。


でもスタート後に何気に見ていると、他の3人は毎ショットの際に、
フェアウエイでも必ずボールを置きなおして打っていました。
練習場マットのようなコンディションなのに。
「それってゴルフじゃない…いやゴルフだけど、例えるならば練習場マットを担ぎながらプレーする、
“練習場マット・ラウンド”かな」
と考えながら、ふと昔LAで参加したプライベート・トーナメントを思い出しました。
ロスの商工会議所主催で、確かに公式な試合ではなかったとはいえ、
かなりの高額商品が飛び交う大会で、
そこで本当にふざけた米国人ゴルファーと同組になったのです。
あるホールで弾丸OBを放ったその男は、「ここはムリガンだ」と言って打ち直したのです。
そしてホールアウト後、そのOB打数をスコアに入れなかったのです。
あまりの暴挙に驚いた私は「一応トーナメントだよ。ムリガンはないだろう」と言うと
「でもムリガン禁止とはどこにも書いていない」と笑っているのです。
数分間口論になりましたが、どうしても折れない相手に疲れて面倒になり、
帰るまでその男とは二度と目を合わせませんでした。

さて、“ゴルフへのストイック度”では日米どちらに軍配が上るでしょうか。
毎ショットの度に6インチ動かす、一部のとぼけた日本人ゴルファー。
“ムリガン有り”が暗黙の了解になっている、一部のふざけた米国人ゴルファー。
うーん… どっちもどっちかな? 
でもお国はどうあれ上手くなりたい人は、どっちにも手をつけないことをお勧めします。
目先の一打に惑わされると、貴方のゴルフレベルは二度と戻れない、
低い次元に落ち込んでいくのです。
何も言わずにディボットからナイスショットした時に、貴方の技術は一気に向上するのです。
OBを打った悔しさをスコアカードに記す時が、
次の大事な場面でナイスショットを生む精神力を培ってくれるのです。
そして、そこにゴルフの面白さが凝縮されているのです… と思いませんか?

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