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ゴルフ徒然草

ヒデ・スギヤマが、ゴルフに関する古今東西の話題を徒然なるままに書きまとめた、時にシリアスに、時にお笑い満載の、無責任かつ無秩序なゴルフエッセイ。

ヒデ・スギヤマ/平日はハリウッド映画業界を駆け回るビジネスマン、
週末はゴルフと執筆活動に励むゴルフライター。

ヒデ・スギヤマ

Vol. 29 天才アマは天才プロになれるか?

入梅間近の日本では、数ヶ月前まで中学生だった紅顔の男の子が、
プロの試合に出場して優勝までやらかしてしまい、大変な騒ぎになっているそうな。
アマチュアがプロの試合で勝つことは、
海外でも幾つかの例があるが(フィル・ミケルソンもアマ時代にPGAで勝っている)、
さすがに15歳という若さは衝撃的だったようで、ギネスブックに申請するやら、
支持率が急降下気味のA総理が人気回復のために官邸に招待するやら、
マスコミに登場しない日は無いほどのフィーバーぶりのようである。

女子プロの人気に押されっぱなしだった日本の男子プロツアーが、
いきなり現れた白馬の王子(確かに“ハニカミ王子”と呼ばれている)に多くを期待するのは当然だが、
残念ながら本人はまだプロ転向など全く考えていないようである。
しかしそれでもゴルフ業界に与えたインパクトは、決して小さくない。
石川選手が優勝後に初めて出場した関東アマでは、何と4日間で1万人前後のギャラリーが観戦に訪れた。
私も関西アマに出場したことがあるが、見に来る人なんて数えるほどだった。
出場選手の家族がピクニック気分で応援に来るといった、言わば町内運動会の雰囲気。
しかし4日間で1万人というと、プロの試合にもひけを取らない集客力である。


またギャラリーの中には、石川選手目当てに初めてゴルフの試合を見に来た、
マナーなど何も知らない女性ファンが多数いた。
彼女達は係員に「フェアウエイに入らないで!」と叱られ、「え、フェアウエイってどこ?」と返し、
その係員はまるで売れない芸人のようにずっこけたらしい。
またその関東アマの試合経過は、夜のスポーツニュース番組で毎日紹介されたこともあり、
彼が着ていたウエアは注文が殺到。
高い契約金を払ったプロ選手に着てもらってもさっぱり売れなかったのに、
高校生が着ただけで売れまくったとは、きつい皮肉としか言いようがない。

喜ばしいこと続きだが、一方で不安も感じるのは私だけでないだろう。
過去、様々なスポーツで天才少年・少女が現れたが、
その後全くの鳴かず飛ばずでひっそりと消えていった例は、枚挙にいとまがない。
例えば最近では、天才少女として大きな話題を呼んだミシェル・ウイー、
以前は男子プロの試合でも通用すると絶賛されたが、最近はパッとしない日々が続いている。
今シーズン初めて出場した女子ツアーの“ギン・トリビュート”でも、
ひどいショットの連続で目も当てられない状態だった。
初心者のように1ホールで10打も打ったり、OBを連発したりと、
結局は16ホールを終えた時点ですでに14オーバー、
持病の手首痛が再発したとの理由から、2ホールを残して無念の棄権となった。

しかし嫌味な発言が売り物のマスコミたちは、そのミシェル・ウイーに様々な噂を立て始めた。
私も知らなかったのだが、米国LPGAは、協会のメンバーでない選手が試合で88以上を打った場合、
そのシーズンが終わるまで出場できない、通称“88ルール”という厳しい決まりがあるそうだ。
16番を終わって14オーバーというと、あと2ホールをパーで終えても86。
けっこう危ないところまで来ていたわけである。
そこでマスコミは、「ウイーは88ルールを恐れてわざと棄権した」と言い出したのだ。
本人は「とんでもない」と一笑に付し、そんなルールも知らなかったと、全く否定しているのだが。
その真偽はともかく、数年前まで大騒ぎされた天才少女も、
今は正直言って影が薄くなった印象がぬぐえない。


ゴルフ以外でも野球やサッカーなど、高校生の全国大会で注目され、
鳴り物入りでプロ入りしたものの、
その後「そう言えば○○君はどこに行ったの?」と名前すら忘れかけられた選手が沢山いる。
その点、やはりタイガー・ウッズはすごい。今から20年ほど前になるだろうか。
日本のテレビで、アメリカの天才少年ゴルファーとして、
特番まで組んで紹介されていたことを鮮明に覚えている。
その当時は私も「さあこの子、将来大人になった時に、
どこまでこの実力を維持できているかな?」と少し侮った視線を投げていたのだが、
今この場を借りてその邪推をお詫び申し上げたい。
ミスターウッズ、貴方はすごい。周りの大人につぶされることなく、
天才アマから天才プロへの道を確実に歩み、ゴルフ界の中央に堂々と君臨しているのだから。

さて、まだ高校1年生の石川選手は、日本の男子ゴルフを復活させる救世主となるか。
一流のスポーツ選手には、若い頃から一流だった場合と、
プロになってから輝きを持ち始める場合がある。
野球で言うと、前者が松坂選手で後者がイチロー選手。
石川選手はもう広範囲に認知されてしまったので、前者の道を進むしか選択が無い。
日本からの映像を見る限り、ルックスも爽やかで華がある。
まだ数年はアマで過ごすのだろうが、将来は大きく羽ばたいて、
そしてぜひアメリカのPGAに挑戦していただきたいものだ。
しかしまだ今は高校生、ゴルフも大事だが勉強も頑張って欲しい。
米国進出する日のためにも、特に英語はしっかりとね、石川君。